この過程で私は多くの学びを得たのですが、中でも、「障害のある人を起点に発明されたものが、世界にはたくさんある」という話が衝撃的でした。
諸説はありますが、タイプライターを発明したのは、イタリアの発明家ペッレグリーノ・トゥーリではないかと言われています。彼は1808年、目が見えない友人が手紙を書けるようにと、タイプライターを発明しました。
紙とペンでは文字を思うように書けない視覚障害者にとって、文字が物理ボタンとして固定されているタイプライターは理にかなっていたのです。このときの発明が、今日私たちが当たり前のように使っているパソコンのキーボードへと進化しました。
ちなみに、曲がるストローは、ジョセフ・フリードマンという発明家が1930年代に考案したと言われています。実はこれは、病院などでベッドで寝たきりの方が、コップを持ち上げずとも、誰の手を借りなくても水分補給できるようにと考えられたのです。
もちろんこちらも、多くの人が今日も世界中で使っているでしょう。
障害も含めた、この社会においてある意味で「弱さ」と捉えられるものは、「発明の母」にもなりえる。だったら息子を起点にして、何か思いもよらないものを発明できるかもしれない!
「強みを伸ばす」ではなく
「弱さを生かす」
そう考えたら未来がパッと開けた気がしました。息子が生まれてからずっと強烈に感じていたモヤモヤが、くるりとワクワクに変換されたのです。そのとき、心から思いました。「強さを伸ばすのではなく、弱さを生かす。そんな仕事がしたい!」。
小学校のときによく、「強みを伸ばせ」と言われました。あるいは「好きなことを磨き、武器にしなさい」とも。だけど私は人生で一度も「弱さを生かそう」なんて言われたことがなかったんですね。
だからこそ、障害のある方々から教えてもらったことが衝撃でした。「弱さ」は力になることがあるんだ、と。そしてその「弱さ」はいわゆる障害に限らなくてもいい。すべての人の中にある「弱さ」を生かして、社会をもっと良くしたい。







