「配給会社にとってはコロナの打撃をじかに受けた劇場を助けると共に、過去に製作した名作を再びスクリーンで観てもらえるというメリットもあったと思います。スタジオジブリはサブスクに作品を配信せず、リバイバル上映も行わない方針で有名なのですが、コロナ禍で瀕死状態だった劇場のためにジブリ作品のリバイバル上映が企画されたほどです。そのくらい、当時の劇場は危機的状況でした」

 そんな激動の中、映画館は3密ではないという理解が広まると同時に、リバイバル上映に魅力を感じる人も増えたという。

「リバイバル上映はいろいろな状況が重なって、現在の大きなブームにハマったのだと思います」

リバイバル上映を観に
台湾から訪れたジブリファン

 同社で企画したリバイバル上映で人気の作品には共通点があるという。

「90年代から00年代に初回上映された作品は人気が高いです。観客層は20代から30代の若い世代が中心。当社の企画では、子どもの頃に上映されていたけれど年齢制限で観られなかった作品や、テレビ放送ではなじみがあってもスクリーンでは未体験という層からの支持があります。上映作品自体は、配給会社と交渉して決めることが多いです。我々の立ち位置としては映画のセレクトショップのようなイメージが近いですね」

 渡辺氏が企画したリバイバル上映の中で、最も興行収入と来場者数が多かった作品はスタジオジブリの『海がきこえる』。1993年に初公開されたこの作品を今年7月に期間限定でリバイバル上映した。

「同作はスタジオジブリの中でも、テレビ放送の回数が少なく『観たことがない』という人が多い作品でもあります。また、舞台が高知県ということもあり、高知県のキネマミュージアムでは一週間前倒しで上映をしました。すると、この企画がキネマミュージアムの動員記録になったとお聞きして、リバイバル上映を企画したことに意義を感じましたね」

 キネマミュージアムは、高知県の中心地に位置し、作中にも登場する場所が周辺に多く点在している。そのため、映画館で作品を観た流れで「聖地巡礼」をすることができるのだ。これはファンにとって夢のような体験になっただろう。

「僕がキネマミュージアムさんにお邪魔したときに、舞台になっている場所の写真を熱心に撮っている方がいたんです。話しかけてみると、作品の熱狂的なファンで台湾から上映を観にきていた方でした」