日清食品マーケティング部第3グループでブランドマネージャーを務める清水文恵氏 Photo by Manabu Fushimi
特に2018~19年には安藤百福・仁子夫妻の半生をモデルにしたNHK連続テレビ小説『まんぷく』効果や、発売60周年の各種施策などで販売数が急増。2018年度は前年比28%増を記録した。また、直近2、3年もSNSの取り組みなどが功を奏して売り上げは右肩上がりだとする。
このように、チキンラーメンは押しも押されもせぬロングセラーなのだが、驚くべきことに、味は発売時から基本的に変えていないという。60年以上が経ち、消費者の嗜好も大きく変化しているにもかかわらず、支持され続けるのはなぜなのか。
67年間「ほぼ味を変えない」
2つの理由とは
チキンラーメンの味について、清水氏は「ほぼ変えていない」と断言する。「ほぼ」というのは、厳密には調味料などに若干の変更があったからだ。
「いろいろなメーカーから調味料を買って作っているため、その時々で終売してしまう場合はあります。そういう際は同等の新しい資材に切り替えるなどしています」
味を変えずに通用するのはどうしてなのか。その秘密はチキンラーメンの食べ方にあった。
チキンラーメンを食べたことのある読者ならお分かりだろうが、同商品の袋麺の場合、基本的にはどんぶりに麺を入れてお湯を注げばいい。分量の目安などは商品のパッケージに書かれているものの、多くの消費者は自分好みで調理している。
さらにトッピングについても、たまごを入れる、入れないから始まり、野菜や他の食材など自由にアレンジしている。ネット検索すればチキンラーメンのレシピが大量に出てくるのが、その証左だろう。
シンプルさによって生まれるこの「余白」こそが、味が変わらない理由である。
「チキンラーメンは食べ方を自分で調節できる商品だと思っています。味が濃いと感じればお湯を多めに入れたり、固めが好きだったらお湯を入れて3分たたずに食べたり。実際、調査をすると鍋で調理される方と、どんぶりで調理される方の2パターンいますし、お湯の量も待ち時間も結構バラバラです」と清水氏。
日清食品社内では厳密にお湯の量を秤で量り、ストップウォッチで時間を計測するが、一般の消費者でそこまでする人は少ないだろう。このような自由度の高さがあるため、元の味を変える必要がなかったのだ。







