「SNSは全部自分でやってます」ネット巧者・玉木氏の不覚
私自身は、玉木雄一郎氏とは、3回テレビ共演させていただいたことがある。「玉木と環(筆者の名前)、ダブルタマキでよろしくお願いします!」などとはしゃいだ挨拶をした記憶とともに、私の中では、玉木氏といえば「SNS投稿でABテスト」とのネット巧者な発言が強く印象に残っている。
それは、ABEMA Primeで私が国民民主党の「手取りを増やす」など確実に有権者の記憶に刻まれ感情に刺さるフレーズを用いたネット戦略に触れ、「玉木さんはネット活動に非常に長けておられると感じる。SNSアカウントの運営は完全にご自分で?」と尋ねたときだった。
玉木氏は、「あれは全部自分でやっています」と認め、日頃からSNSやネット記事をよく読んで世論をウォッチしていること、同じ政策もどのような発信ならばより多くの有権者に届き支持されるか、ネットでもいくつか表現法を変えて“ABテスト”のような検証を行い、感触の良いものを残していくようにしていることなどを率直に明かしてくれた。
2024年11月の衆院選で「手取りを増やす」という名フレーズを掲げ、特にネットユーザーの熱狂的な支持を取りつけて、議席4倍増(28議席)という大躍進を見せた国民民主党。しかしその番組が放映された時、玉木氏本人は衆院選直前に盛大な文春砲を浴びてグラビアアイドルとの不倫疑惑が報じられたタイミング。選挙は成功裏に乗り越えたものの、党代表として役職停止中という身の上だった。
有権者の情け?意外にこじれなかったグラドル不倫騒動
自身や党の政策イメージを戦略的にコントロールしていた玉木氏としては、文春砲は不覚だったろう。だがPRコンサルタントを入れたのであろうソツのない謝罪会見を、驚くほどの完成度でやり切った玉木氏の胆力は凄まじかった。「調子に乗っていた」と全面的に謝罪、配偶者の理解と応援を得たとし、目の前の選挙に全力を注ぐと宣言。
あんなにヒドい(世間に嘲笑のネタを与えるという意味で)不倫疑惑が選挙直前に発覚したら、普通ならゲームオーバーだと絶望するだろう。だが強靭な精神力と力技で私生活と政治を見事に切り離し、選挙の瞬間を乗り越えた玉木氏はバケモノ(政治家としては褒め言葉)だと思った。
いまだにお相手の動向が週刊誌記事となるなど、世間は今も全く忘れていない。ネット上でも頻繁に笑いのネタとなる衝撃的な不倫騒動だったが、不思議なほどに世間の反応がこじれなかったのは、行動撤回も恥も嘲笑も粛々と受け入れて「次」へ進んだ玉木氏のキャラクター、愛嬌(?)ゆえだったのだろうか。
少なくとも昨年の秋、情け深い有権者たちは、玉木氏のグラドル不倫騒動よりも「手取りを増やす」という政策の明確なメッセージに軍配を上げ、それこそ公私を切り分けて考えた“政策本位”で、玉木氏を自分たちの利害の代表者であると認めたのだった。「手取りを増やす」は、有権者にとってそれほどに切実な政治的課題だったからだ。







