本連載第3回でダルエスサラーム近郊、キノンドニ地域Manzese地区で行なわれていたコンドームの正しい使用方法や使用促進を目的としたエデュテイメント(教育と娯楽を合わせた造語)の様子を紹介した。実はこのManzese地区は、ダルエスサラームでは有名な売春街でもある。街を進むと、粗末な家々に挟まれた路地では子どもたちが無邪気に走り回る。だが、よく見るといくつかの家には小さな戸がいくつもあり、中は小部屋になっている。そこで夜になると売春が行なわれる。HIV/エイズの問題を語る上で欠かせないのが、ここで働くセックス・ワーカー(売春婦)たちの存在だ。彼女たちの置かれた現実から、問題の本質を探る。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

売春は犯罪行為でも
警察も客だから放置

貧しさとカネと暴力が絡み合う混沌の売春街 <br />HIV感染リスクを負いながらもがく女性たち取材中に後ろから急に筆者の肩をつかみ、スワヒリ語で必死に話しかけてきたイッサ。写真を取って、一通り話を聞くと、満足そうに帰っていった Photo:DOL

「オレの写真を撮れ」

 そう言って、彼は筆者の肩をつかんだ。

「このあいだHIV陽性だって分かった。オレが生きていた証として写真を撮ってほしい」

 理由を聞くと、彼はそう答えた。名前はイッサ、22歳。感染経路について知っているのかと聞くと「生活が嫌になって酒を飲んで、セックス・ワーカーとセックスした。コンドームはしなかった」からだという。

 タンザニア、ダルエスサラームでも有名な売春街であるManzese地区。ここでは“買う”方も“買われる”方も、命を削りながら必死に生活している。