サハラ砂漠以南のサブサハラ・アフリカ諸国にとって、もっとも頭の痛い社会問題はHIV/エイズ問題だろう。国連や世界基金、数々の国際機関が支援を続けているものの、解決には長い道のりが見込まれている。HIV/エイズとの戦いを、タンザニアのHIV/エイズ対策を一例にレポートするとともに、問題の本質を探っていく。そこからは、本連載第2回で黒川 清・日本医療政策機構代表理事が述べた「貧困と健康問題の密接な関係」が見えてきた。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
資源開発が進むと同時に
HIV陽性者が増加する街
タンザニアの政治・経済の中心地、ダルエスサラームから国内線で約1時間南下すると、モザンビークとの国境に近い街、ムトワラがある。滑走路は1本のみ、空港建物から出れば、すぐに土と砂利の悪路がムトワラ市街地まで続く。ここはカシューナッツの産地としても知られている。
この静かな田舎町で、ジワリとHIV陽性者が増加している。
「ムトワラの域内では2007~08年のHIV陽性者は3.6%だった。それが2012年には4.1%に上昇している。特に女性の陽性者が増加傾向だ。これは今後も上昇を続けるだろう」
こう話すのは、ムトワラ中心地にあるリグラ・リージョナル・ホスピタルでHIVコントロール・コーディネーターを務めるハムフェダス・キサモ氏。最大の要因は近隣で活発化する資源開発だという。