「税金の壁」は気にせずともOK
注意すべきは「社会保険の壁」

 複数ある「パート収入の壁」のうち、注意すべき壁はどれか。

 税金にかかわる壁は、気にしなくてもOK。税金は、壁を超えた部分だけにしか課税されないからだ。

 例えば、年収が160万円を超すと所得税がかかり始めるが、161万円にかかる所得税は壁を超えた1万円の5%、500円。また、夫が受けられる配偶者控除もいきなり控除額がゼロになるわけではなく、段階的に減っていく仕組みだから、気にしなくてもいい。

 注意したいのは、社会保険の壁。勤務先の規模により、「106万円の壁」もしくは「130万円の壁」があり、壁を超えたとたんに、収入全体に社会保険料がかかる。

 年収106万円で勤務先の社会保険に加入する場合、年収105万円だと社会保険料はゼロだが、106万円になると、収入全体に約15%の社会保険料、年約15万7000円がかかる。年収の増額は1万円だが、社会保険料の分、手取りが減ることになる。

 もちろん、自分自身で社会保険に入るメリットもあるので、筆者は「壁越え推進派」だ。厚生年金に加入することで、将来受け取る年金はわずかだが増えるし、病気で仕事を欠勤したときに健康保険から、傷病手当金という給付を受けることができる。

 しかし、メリットがあるとはいっても、収入が1万円増えたとたんに手取りが減るのは誰だって嫌なもの。

「106万円の壁」を超えて手取りが減ったとしても、もう少し働くと、壁の直前の105万円の手取り額を超える年収は125万円。この金額は重要だから覚えておこう。

「企業規模」「賃金要件」は撤廃
「年収125万円以上を目指す」のが望ましい

 国は、パートで働く人の社会保険加入を促し、社会保険の被扶養者である第3号被保険者を減らしていく政策をとっている。

 具体的には、「企業規模要件(従業員数)の撤廃」と「賃金要件(106万円の壁)の撤廃」だ。この2つの要件がなくなると、「週20時間以上の勤務」だけが残り、社会保険に加入するハードルが下がることになる。

 現在、企業規模要件は従業員数51人以上が対象だが、今後数年かけて「36人以上」「21人以上」「11人以上」「10人以下」となり、最終的にはどこで働いたとしても、社会保険に加入することになる。

 年収要件の撤廃も数年以内に施行される予定。年収106万円とは、法律上は月収8万8000円だ。

 昨今の人手不足で地域別の最低賃金が上昇していることを鑑みると、週20時間以上働いた場合、自然と8万8000円を超す……というのが国の見立て。2026年か27年には年収要件はなくなりそうだ。

 パートタイマーを取り巻く制度は、数年以内に大きく変化することが決まっている。もう少し働きたい、自分のために貯蓄したいと考えるなら、最新情報を踏まえ、社会保険に加入しても手取り逆転現象が発生しない年収125万円以上を目指して働くのが現実的といえる。

 社会保険に入れてくれる会社を選び、週20時間以上、かつ月収10万5000円(年収125万円)以上働く準備を始めよう。