これを踏まえ、関係とは、関心という意識と、関与という行動の両者に及ぶとして、「地方部に関心を持ち、関与する都市部に住む人々」と定義している。

関係人口のかたちは
都市部→地方にとどまらない

 ただ、この定義だけでは、都市に関心を持って関与する地方の関係人口が捉えられなくなる可能性があった。国土交通省の調査でも3大都市圏から地方への動きが大きいという結果が出ているが、地方から3大都市圏という流動もないわけではない。

 そこで筆者は2021年、著書『関係人口の社会学』で、関係人口を「特定の地域に継続的に関心を持ち、関与するよそ者」だと定義した。よそ者は「響きが冷たく、良い印象を受けない」と言われることもあるが、社会学的な蓄積がある言葉で、そこに価値判断は込められていないことは申し添えておきたい。

 また、人口は厳密には人々の総数を意味するが、当時は関係人口という言葉が数というより関わる人そのものを含意している経緯も踏まえた。

 本稿では、関係人口を「特定の地域に継続的に関心を持ち、関与するよそ者」と位置付ける。継続的なつながりを重視し、愛着を含んだ関心を持って、関与=行動する新しい主体である。特に断りがない場合は、都市住民を想定している。

 関係人口は新しいライフスタイルという一面もあるため、そうした側面にも光を当てていきたい。

 本稿では、都市とは東京、中京、京阪神の3大都市圏や札幌、福岡といった政令指定都市、県庁所在地などを指し、それ以外を地方としている。地域は、自治体というより日常生活圏の範囲に近い区域を想定し、都市にも地方にも存在している。

地元民でも観光客でもない
新しい関わり方

 続いて、関係人口とそれに類似する言葉との異同を整理したい。

 地域をめぐっては、主に定住人口と交流人口という2つの人口が論じられてきた。どこかで耳にしたこともある言葉ではないかと想像するが、関係人口とどう違うのだろうか。

 定住人口や交流人口と、関係人口の違いは、時間の観点から示せる。