中でも、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は最も運動に反応して増加することが分かっています。

 このNK細胞は、全身をパトロールしているリンパ球で、真っ先にがん細胞などの異物(敵)を見つけては攻撃します。ですので、たとえがん細胞が発生したとしても、筋トレによって血液中に増えた免疫細胞が、がん細胞を見つけて除去してくれると考えられます。

自宅でできる筋トレで
じゅうぶん効果を得られる

 また、がんの1つの危険因子に、肥満や糖尿病があります。つまり、肥満や糖尿病の人は、大腸がんなどのがんの発症リスクが高くなります。ただ、筋トレによって血糖値の上昇が抑えられ、がんの原因となる肥満や糖尿病を防げることが分かっています。同時に、発がんを促進するといわれているインスリンの分泌を抑えることもできます。

 以上のような理由によって、筋トレががんの発生を抑えていると考えられます。では実際に、筋トレをしている人は、どの程度がんのリスクが減るのでしょうか?

 これについては、いくつかの研究から結果が出ています。

 まずは、2018年にAmerican Journal of Epidemiologyという雑誌に報告された論文によると、イギリスにおける8万人以上の国民を対象として、筋トレの回数と死亡率との関係を調査したところ、週に2回以上筋トレをしている人は、そうでない人に比べて、すべての死因による死亡リスクが23%低く、中でも、がんによる死亡リスクは31%低かったとのことです。

 ちなみに筋トレの方法に関しては、専用のマシンを使わない自重トレーニング(自分の体重を負荷として利用する筋トレ)も、ジムなどで行われる筋トレと同等の効果があると認められました。つまり、自宅でできる筋トレで十分ということです。

 また最近、日本の研究チームからも、筋トレとがん死亡率との関係を調査した研究結果が報告されました。2022年にBritish Journal of Sports Medicineという雑誌に報告された論文によると、筋トレとがんなどによる死亡率との関係についての過去の研究を総合的に解析した結果、筋トレをすることで、がんによる死亡リスクが12%、すべての死因による死亡リスクが15%低下していました。

週30分の筋トレが
がん死亡リスクを最も下げる

 では、がんのリスクを下げるためには、具体的にどのくらいの時間筋トレを行えばいいのでしょうか?