先ほどの日本の研究チームからの報告では、がんの死亡リスクは、筋トレの時間が週30分で最も低くなっていました。ところが、筋トレ時間が週に130分を超えると、逆に死亡リスクは高くなるということが分かりました。

図表:筋トレ時間とがん死亡リスク同書より転載 拡大画像表示

 これは、筋トレはやればやるほどいいというイメージからすると、かなり意外な結論です。やりすぎもがんのリスクを高めるため、ほどほどがベストということです。

 週に30分の筋トレは、1回15分を週に2日、あるいは1回10分を週に3日間やればいいということになります。この程度なら、続けることができるような気がしますね。がん予防のために、ほどほどの筋トレをおすすめします。

 先ほどの項目で、筋トレががん予防につながるということを解説しましたが、中には「本当に運動が苦手」という人もいるでしょう。

 身体活動量が多い人(活発に動く人)のほうが、がんになるリスク、あるいはがんで死亡するリスクが低いことは以前から報告されていましたが、ただこれまでの研究では、どのくらい体を動かせばいいのか?という基準がはっきりとしていませんでした。

 しかし、ウェアラブルデバイス(体の一部に装着して使う電子機器)を用いた画期的な研究結果が報告されたことで、じつは筋トレまでいかなくても、「ちょっと体を動かす」だけで、がん予防に効果があることが分かったのです。

1~2分間以内の「短い運動」が
がん死亡リスクを下げる

 オーストラリアとイギリスの合同研究チームは、UKバイオバンクという観察研究に参加している一般の国民のうち、「決まった運動習慣がない(つまり、意識して運動をしていない)」と答えた2万5000人以上(平均年齢が62歳)を対象として、7日間、ウェアラブルデバイスで日々の体の動きを記録しました。

 とくに、身体活動の中でも、「短い時間(1~2分間以内)の激しい体の動き」に注目し、これをヴィルパ(VILPA:Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity)と名付けました。直訳すると「激しく一時的な日常生活における身体活動」ということです。