一時95円割れとなるなど、ドル安・円高の動きが広がってきました。
これは、前回までのレポートで書いてきたように、2009年1月につけた87円という円高値・ドル安値更新へ向けた動きの始まりだと思っています(「円・ドル「同時安」が崩壊し、ドル/円は「年末80円」へ動き始めた!」など参照)。
ただ「特別な材料」がない限りは、95円→90円の動きはゆっくり、1~2ヵ月程度の期間を要するのではないでしょうか?
「100年に一度の危機」を乗り切るため、米国政府は政策を総動員し、それが功を奏して「危機」を脱出できそうな状況になりました。ただ、うまく脱出できたとしても、今度は政策総動員のツケが「第2の危機」をもたらす可能性が出てきたのです。
この「政策総動員のツケ」の象徴が、大量に増発された米国債の消化懸念であり、そのような米国債デフォルト(債務不履行)のリスクを抱えている結果、「第2の危機」の主役がドル暴落リスクとなるわけです。
このような構図の中にあることを理解すると、先週、95円割れへとドル安・円高が加速したきっかけが米国債「格下げ」観測の浮上にあったことが、とてもよくわかると思います。
米国債問題こそが、現在のドルにとっての最大のアキレス腱と言えるでしょう。
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日本国債「格上げ」で
ドル/円は96円台へと揺り戻し
このように、ドル安・円高の動きが顕著となってきました。しかし、18日には96円台へと揺り戻される動きになっています。この「影の主役」は、日本国債の「格上げ」だったのではないでしょうか?
18日に、大手格付機関から日本国債の「格上げ」が発表されましたが、このタイミングが市場関係者の一部で憶測を呼びました。米国債を「格下げ」できないために、バランスを考えて日本国債を「格上げ」したのではないかとの見方がささやかれたのです。
前述のように、米国債を取り巻く状況、特に債務残高という観点からすると、日本国債などの格付けに比べて、米国債の格付けは高すぎるといった議論が出てくるのはある意味で自然なことです。
ただ、米国債の「格下げ」が簡単にできないならば、相対的に日本国債を「格上げ」することで議論が活発化することを回避するといった考え方があってもおかしくはありません。
こんなふうに考えると、なぜこのタイミングで急に日本国債の「格上げ」なのかといった素朴な疑問に対する「真の答え」は、米国債の「格下げ」ができないことの「隠ぺい工作」なのかもしれません。