日本人にはわかりにくいですが、欧米の「チップ制度」と似た感覚だといえるでしょうか。
欧米ではサービスに対してチップを支払うのは、当然のマナーとなっています。こうしたチップが生じる職種は、おしなべて固定給が低く抑えられています。これは、チップをもらうことが、最初から組み込まれているからです。
感覚は似ていますが、チップと賄賂ではやはり違います。
最大の違いは、賄賂はあくまでも賄賂なので、定価・相場がないということです。そうである以上、いくらとってもいいし、どこまでが必要不可欠なもので、どこからが不当な賄賂なのかという線引きができません。
しかも、多くくれるところがあればそちらになびくことになるので、賄賂の額は自ずとつり上がっていくことになる、というわけです。
善悪の基準の曖昧さが
国際社会で摩擦を生む
では、賄賂も汚職も合法なのかというと、そうではないのも、この問題を複雑にしている要因の1つといえます。
中国においても、汚職や賄賂は、「悪いこと」なのです。必要悪なので基本的には黙認されます。それでも悪は悪なので、何かの拍子にそれが法令違反と断じられ、取り締まりの対象にされてしまうことがあるのです。
中国の場合、実はこうした問題は、賄賂に限ったことではありません。これは歴史を研究すればするほど痛感させられることなのですが、すべての面において、中国には合法、非合法、善悪の境界が希薄なのです。
たとえば、中国ではアヘン戦争(1840~42)が起きる前から、アヘンのもち込み・使用は法律で禁止されていました。しかし、中国人はその法律をまったく守っておらず、そんな状況を政府も黙認していたのです。
中国人自身が自分たちの法令を無視しているので、イギリス人も気にせずアヘン取引をしていたところ、それまでずっと見逃していたにもかかわらず、ある日突然、「これは違法である」といってアヘンを没収されてしまったので、イギリスは激怒したのです。







