13世紀から16世紀にかけて活動した倭寇に対しても同じことが行われています。中国では、「倭寇」といって、まるで日本の海賊船が一方的に襲撃略奪したようなことをいっていますが、もともとは単なる民間貿易にすぎなかったのです。

 確かに当時の中国は、外国との自由貿易を禁じていましたが、実際には誰もそんな法律を遵守していなかったのです。そうして行っていた貿易を、ある日突然、「違法行為」として取り締まったのです。

無風だった領土問題を
突然俎上に上げる中国側の理屈

 こうした例は、枚挙に暇がないほど多く存在するうえ、現在も生じています。

 たとえば、南沙諸島をめぐる領土問題がその1つです。

『教養としての「中国史」の読み方』書影『教養としての「中国史」の読み方』(岡本隆司、PHP研究所)

 中国は南沙諸島を自国の領土だと、ずっと前からいっていましたが、現実には何もしてきませんでした。それがある日突然、島を拡充し、ヘリポートをつくり、実効支配して悶着を起こしています。

 これは尖閣諸島でも同じです。

 何がきっかけで動くのか、おそらくいろいろな状況で決まるのでしょうが、画一的なルールにもとづいているわけではないので、周囲にはそれがいつ起きるのかまったくわからないのです。

 おそらくこれは、中国人であっても、確実にはわからないと思います。中国人はそうした環境・歴史の中でずっと生きてきているので、そこを察知するセンスが磨かれているわけです。