世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。

【想定外!】世界の富裕層が熊野古道に求めた“とんでもない旅のスタイル”とは?Photo: Adobe Stock

型番指定のハーレーダビッドソンで美食めぐり

 タイパを重視する富裕層がいる一方で、道中を自分たちらしく楽しみたいという富裕層もいます。ヨーロッパの企業と頻繁に仕事をしている私の友人が、次のような話をしてくれました。

 日本を10回以上訪れているイタリアの富裕層が、旅行会社にこんな依頼をしてきたそうです。
「紀伊半島の熊野古道をバイクで旅したい」。

 素敵なプランだと思いますが、旅行会社の方は困ってしまったそうです。なぜなら、ハーレーダビッドソンの型番を指定され、しかもそれを4台用意するようにお願いされてしまったからです。あまり出回っていない型だったため、レンタル会社に問い合わせても在庫がありません。しかし相手は上得意のお客様です。

 そこで、旅行会社の方は世界中からその型番を買い集め、なんとか4台用意し、スタート地点に並べておいたそう。その様子を見たイタリア人富裕層は、おそらくテンションが最高潮に高まったことでしょう。「これから特別な旅が始まる」と、心躍ったに違いありません。

 そしてここからは私の想像になりますが、熊野古道近辺には美味しい店がたくさんあるので、それらの店に気ままに立ち寄りながらツーリングを楽しんだのだと思います。実際、彼らは大いに満足して帰国したそう。

 このように、今日の世界の富裕層は、東京や京都の高級料理を味わうだけでは満足しないのです。
いかに人と違うオリジナルな体験をするか」に重きを置き、そこに喜びを見出しているのです。ちなみに、残されたバイクは、旅行会社の方がリセールしました。貴重な型番を4台まとめて販売したことで付加価値が高まり、大きな利益を得たそうです。

 一般的な感覚からすると、「レンタルできないなら仕方がない」と諦めてしまいそうですが、おそらく富裕層にそのような発想はないのでしょう。今回は、旅行会社の方が機転をきかせましたが、おそらく彼ら自身、口にしなくても「借りられないなら買えばいい」「ないなら作ればいい」、そんな発想が根底にあるのだと思います。当の本人たちからすると、無理難題をふっかけた気など毛頭ないでしょう。

 このエピソードからは、人生を軽やかに自分らしく楽しむ富裕層たちの姿が見て取れるのではないでしょうか。もちろん旅行会社は大変だったでしょうが、利益も充分すぎるほど得たはずです。

※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。