多摩の大学として描く未来
2000年の多摩モノレール開通後、23号館から33号館までの新しい教育研究棟も次々に立ち上がった
――他にも「明星大学教育新構想」での取り組みはありますか。
落合 学生が集まる学修の場として「MEISEI HUB」、通称ハブを2023年に作りました。仕切りも壁もない千畳敷の広いスペースです。イベントスペースやくつろげるフリースペース、大きなグリーンの下で静かに勉強できるスペース、教員とカジュアルに英会話などを楽しめるランゲージ・ラウンジなどがあります。自校教育やキャリア教育を担う明星教育センター、留学を推進する国際教育センター、充実した歴史を持つボランティアセンターも、ここで活動しています。いまは学生に手伝ってもらって運営していますが、そのうち「ハブ・クラブ」のようなものを立ち上げ、ハブの運営をすべて学生に任せたいと思っています。
――ここ数年で目に見えるように変えてきたわけですね。
落合 このスペースを生かした最初の展覧会は、デザイン学部が持っている世界の名作椅子コレクションでした。何十脚も置かれたのですが、見るだけでなく、座っていいことにしました。学生は面白がって歴史的価値のある有名な椅子のオリジナルの座り心地を試したりしていました。私もコマみたいな形の椅子に座ってみましたが、見事にひっくり返りました(笑)。助けてくれた学生たちも大笑いでした。
通り過ぎても滞在してもいいハブを作った意図は、こうしたダイレクトな「見る・見られる関係」を生み出すことにありました。職員の提案で学内のどこかにあった古いグランドピアノを調律してハブに置いたところ、学生も先生も弾き始めた。ストリート・ピアノならぬハブ・ピアノですね。昼休み限定で始めたのですが、これがみな上手なんです(笑)。学生にとり、ハブが一日一度は訪れたくなる場所になりました。大きなグリーンの下の席は落ち着いて勉強するには最適らしく、たいてい埋まっていますね。
壁画が描かれたときには、学生からその前のテラスでダンスをやりたいという提案もありました。これまでは真面目一辺倒な大学でしたが、こうしたエネルギッシュな動きの場が学内に加わったことは、学生生活にとり素晴らしいことだと思っています。
――それは校訓が「健康、真面目、努力」ですから(笑)。
落合 ずっと掲げていると学生もそうなっていくものなのですね。「うちの学生はどうですか」と企業の採用担当者に尋ねたことが幾度かあります。返事はいつも「無色透明ですね」。それを聞いて「これはダメだという意味なのか」とがっかりしたのですが、「いや、変な色が付いていないから、入社してからすごく吸収力を発揮する素直さがあるということなんです。役員に好かれる人が多いですよ」と言われて、とても嬉しくなりました。
――学校による学生のキャラクターというのはあるものなのですね。
落合 おしゃれな大学、男っぽい大学、スマートな大学といった世間のイメージに沿わなきゃと学生自身が思うのかもしれませんね。新型コロナ禍が始まった20年度の新入生には当初、対面授業ができませんでした。そうしたとき、下級生に接したいという働き掛けが3年生を中心に起こり、全学に広がりました。それならばと、三密に注意しながら各学科で新入生のための懇親会を開いてもらいました。孤独だった1年生は力づけられたことでしょう。明星大生気質というのでしょうか、上級生の面倒見の良いところも本学の特徴です。







