実際、比較的温暖なエリアであっても、冬場の脱衣所の室温が一ケタ台まで下がるケースは珍しくない。凍えるような寒さから熱い湯船に浸かった瞬間の“極上の気持ちよさ”。実はこれこそが、急激な血圧変動を招き、心臓や血管へ猛烈な負担をかけているサインでもあるのだ。

 また、都市部に多い「3階建て住宅」や「吹き抜け」のある家も要注意だ。暖かい空気は軽いため上へ移動し、冷たい空気は重く下へ溜まる性質があるため、縦に長い空間では上下階で大きな温度差が生じてしまう。3階のリビングは暖かいのに、1階の寝室へ降りていくとまるでワイナリーのように底冷えする、そんな極端な温度差が、家の中で日常的に生まれてしまう事例もある。

 では、具体的にどの程度の寒暖差がリスクになるのだろうか。目安として、室内の温度差が10℃以上あると危険水域とされるが、日本の戸建てでは、リビングが約25℃、脱衣所が10℃以下と、15℃近い差が生じていることも。理想を言えば、家全体で「5℃以内」の温度差に抑えることが望ましい。

 もちろん、根本的な解決策としては、断熱改修や内窓(二重窓)の設置が非常に有効だ。しかし、それには相応のコストや時間がかかってしまう。そこで、まずは今日からできる「小さな対策」から始めてみるのはどうだろうか。脱衣所やトイレに小型ヒーターを置く、あるいはサーキュレーターで空気を攪拌(かくはん)して上下の温度差を和らげる。何よりも大切なのは、家の中に「極端に寒い場所」を作らないこと。まずはそこから目指してみてほしい。

給気口を閉鎖する
寒さ対策がNGな理由

 最後に、建物の性能といったハード面だけでなく、住む人の生活習慣というソフト面に潜むリスクについて触れておきたい。

 冬場、寒さを防ぐために良かれと思ってやりがちなのが、壁についている「24時間換気の給気口」を閉じてしまうことだ。冷たい外気が直接吹き込む構造上、これを閉じて寒さをしのごうとする気持ちは理解できる。しかし、専門家の視点から言えば、これは決して推奨できないNG行動だ。現代の住宅は気密性が高いため、給気口を塞ぐと空気が淀み、人の呼吸や生活で発生した湿気が逃げ場を失ってしまう。これが結露やカビの原因となり、建物を傷めるだけでなく、アレルギーなどの健康被害にもつながりかねない。