なぜ、新築であってもこのような施工不良が相次ぐのか。最大の要因は、慢性的な職人不足と監督の多忙によるヒューマンエラーにある。さらに根深いのが、冒頭で触れた省エネ基準の義務化に対して、現場の体制が追いついていないことだ。求められるクオリティと難易度が上がる一方、現場では新しい基準が十分に周知されず、「今まではこのやり方で問題なかった」と従来の感覚で作業が進むケースも散見される。設計の理想が先行し、それを形にする現場の実力が追いついていない、そんな「過渡期の歪み」が、断熱不備という形で表れているとも言えるだろう。

 上記を踏まえると、注文住宅を建てる際は、ホームインスペクションなども活用し、第三者の視点で図面通りの性能が発揮できる環境かを見極めることが重要になる。新築でさえこの状況である以上、中古住宅や現在お住まいの家にも不具合が潜んでいる可能性は高い。そのリスクを事前に知っておくだけでも、家を守る意識は変わってくるはずだ。

「温暖エリア」と「3階建て」に潜む
ヒートショックのリスク

 施工品質の問題に加え、第2のリスクとして見落としがちなのが、「家の立地や形状」に起因する寒さと、それが招くヒートショックがある。ヒートショックという言葉自体は、ニュースなどで取り上げられることも多く、すでにご存じの方も多いだろう。急激な温度変化によって血圧が乱高下し、失神や心筋梗塞(こうそく)などを引き起こす現象のことだ。

 しかし、このヒートショックが「どこで起きやすいか」については意外と知られていない。一般的には北海道や東北といった寒冷地のリスクと思われがちだが、実は首都圏を含む、関東以西の「ほどほど温暖な地域」での発生率が高いことをご存じだろうか。

 理由はシンプルだ。寒冷地では冬の寒さが厳しいため、昔から断熱性能の高い家づくりが当たり前になっており、家全体が暖かく保たれているケースが多い。一方、温暖な地域では「断熱にそこまでお金をかけなくても、冬は越せるだろう」という感覚が根強かった。その結果、リビングは暖房でポカポカだが、一歩廊下に出れば外同然の寒さが待っている…そんな「極端な温度差」を抱えた家が、数多く作られてきた背景がある。