そもそも24時間換気の目的は、シックハウス対策で、空気を適切に換気することでアレルギー物質に加え、湿気や二酸化炭素などを排出し、空気の汚染を防いでいる。

 特に寝室などでCO2濃度が上がれば、睡眠の質の低下や頭痛を招くリスクも考えられるからだ。こうしたリスクを回避し、建物の健康を維持するためにも、換気システムは原則、常時稼働させておくことが基本となる。寒さが不快な場合は、給気口を閉じるのではなく、ベッドや暖房器具の位置を変えたりすることで、快適な状態を整えてほしい。

冬の「快適」と「安全」を
両立させる家づくりを

 ここまで冬の寒さの根本原因となる「建物」と「暮らし」の双方の側面について、詳しく解説してきた。ただ、施工不備や温度差、誤った習慣といった複雑な課題を、感覚だけで解決するのは難しい。

 解決の糸口となるのが、温湿度計による「住環境の見える化」だ。最近ではスマホでログを確認できるSwitchBot(スイッチボット)のようなスマート温湿度計も手軽に導入できる。リビング、脱衣所、寝室などに設置し、「この部屋は温度差が10℃もあるから危険だ」「湿度が上がりすぎているから換気が必要だ」と、データに基づいて判断してみてはどうだろうか。実際に環境を管理することで、風邪やインフルエンザのリスク軽減など、体調の安定にもつながることもわかっている。

 家は単なる資産ではない。冬の戸建ては「寒いのが当たり前」ではないのだ。ヒートショックや高熱費、施工不良といった問題も、すべて対策可能である。これからの住宅では、新築・中古を問わず、断熱性能を“測り・確かめ・維持する”ことが基本となる。断熱改修や窓リフォームによって断熱性能を正しく評価し、温度差のない環境を整えること。これこそが、省エネ効果だけでなく、長期的な医療費の削減や健康寿命の延伸、ひいては社会全体の医療費抑制に資する「未来への投資」と言えるはずだ。

「暖かい家」は、命と資産を守るインフラである。これから本格化する冬を前に、ぜひ一度、ご自宅の「寒さの正体」に向き合ってみてはいかがだろうか。

(株式会社さくら事務所創業者・会長 長嶋 修)

さくら事務所公式サイト
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