男性更年期とは何か
40代で「体調の差」が開くワケ

 男性更年期(LOH症候群:加齢男性性腺機能低下症)とは、加齢に伴って男性ホルモン(テストステロン)の分泌が低下することで生じる症状群のことだ。

 テストステロンは、男性の心身の活力を司る極めて重要なホルモンだ。筋肉量の維持、骨密度、性機能だけでなく、やる気、判断力、集中力といった精神面にも大きく影響する。

 一般的に、男性のテストステロン値は20代をピークに、加齢とともに1年で約1%ずつ低下していくとされている。しかし、全ての男性が同じペースで低下するわけではない。

 運動習慣があり、良質な睡眠を取り、栄養状態が良好な男性では、テストステロン値の低下が緩やかだ。一方、ストレスが多く、運動不足で、睡眠が浅く、栄養が偏った男性では、加齢による低下に加えてさらなる低下が起きてしまう。

 つまり、生活習慣がどのようなものかで、40代での体調の差は大きく開いてしまうのだ。

男性の更年期障害による
経済損失は1.2兆円

 ここで注目したいのが経済的インパクトだ。経済産業省は、男性の更年期障害による年間の経済損失を1兆2000億円と推計している。

 内訳を見ると、極めて具体的だ。仕事のパフォーマンス低下によって4000億円、欠勤による損失が1100億円、そして離職による損失が5800億円。さらに離職に伴う追加採用活動にかかる費用が1100億円という具合だ。

 つまり、男性更年期による経済損失の大部分は、優秀な人材の喪失と、その補填にかかるコストなのである。

 2025年6月に日本政府が閣議決定した向こう1年の経済財政運営の指針「骨太の方針」においても、男性の更年期障害への対応推進が明記された。すなわち、これはもはや個人の健康問題ではなく、国家規模の経済課題として認識されているということだ。

 仕事の面で一番脂がのってきている40代、50代のビジネスパーソンが、本来は最も経験と判断力を必要とされる時期に、最高のパフォーマンスを発揮できていない。その結果として、企業の生産性が落ち、日本全体の競争力にも影響している。

 これは経営層にとっても、本人にとっても、非常にもったいない話だ。