不調が起きても
診てくれるところがない

 さらに深刻なのが、「不調が起きても診てくれるところがない」問題だ。

 女性の更年期は産婦人科という専門医がいて、ホルモン補充療法(HRT)という確立された治療法がある。しかし男性更年期については、診療を専門としている医療機関が少なく、どこに相談したらよいかわからない患者が大多数というのが現状である。

 実は、2022年に日本泌尿器科学会と日本メンズヘルス医学会によって「男性の性腺機能低下症ガイドライン」が改訂されており、診断基準や治療法は確立されている。

 しかし、このガイドラインを活用して診療を行う医療機関はまだ限定的だ。一部の医師の中には、「そんなものは病気ではなく加齢現象だ」と捉える者もいる。

 その結果、症状があっても放置されたり、抑うつ薬などの対症療法に頼ったりすることになり、本質的な改善には至らないケースもある。つまり、医学的なコンセンサスは確立されているが、医療現場での実装がまだ進んでいないという状態なのだ。

 ただ、政府も問題を認識し始めている。厚生労働省は今後、男性更年期障害に関する調査・研究を本格化し、啓発活動を強化する方針だ。つまり、医療体制の整備も少しずつ進む可能性がある。

 その過程でも、個人レベルでできる対策を知っていることは極めて重要だ。

男性更年期障害
対策の“鉄則”とは?

 では、どうすればいいのか。

 男性更年期に対処する基本は、「3つの生活習慣改善」だ。運動(特に筋トレ)、睡眠、食事(栄養)である。

 医学的には、テストステロン値が低い場合、テストステロン補充療法という選択肢もある。しかし、まずは生活習慣の改善を通じてテストステロン産生を促進することが重要だ。多くの場合、この3つの要素を正しく改善するだけで、症状の大幅な改善が見られる。

 ここで注目したいのは、これらの対策は決して難しいものではないということだ。特別な医療機器も、高額な費用も不要。次回以降、運動、睡眠、食事、それぞれの具体的な改善のコツについて解説していく。

 あなたが感じている「40代からの衰え」は、実は対処可能な問題かもしれない。そして、その対策は今すぐ始めることができるのだ。一緒に、医学的根拠に基づいた対策を学んでいってもらいたい。