波長が合わない人との会話は
なんだかしっくりこない

 最近のコロナ禍でのロックダウン中に多くの人が痛感したように、ビデオ会議の難点の1つは、タイミング遅延や不具合のせいで通信が頻繁に中断され、会話がぎこちなくなることだ(注3)。

 社会的交流を促す非言語コミュニケーションも、人間が敏感に感じ取る、協調的・同期的なシグナルを多用する。たとえ意識していなくても、相手と動きが合わないと、何かが欠けているような気がする。ワクワクする感じがなく、なんだかしっくりこないのだ。

 そんな状態を、「波長が合わない」と言う。

 古くから同期運動は、社会的つながり感を促す重要な要素として、詠唱や歌、ダンス、ドラムなどのかたちで楽しまれてきた。息の合った動きは、個々人の動きを足し合わせたよりも、ずっと大きく意義深いものに感じられる。

 だからこそ同期運動は、重要な儀式のほとんどに含まれるのだ(注4)。それは文化を問わず、あらゆる儀式の中心にある。

 音楽表現は、人と行う最古の文化活動の1つだ。最古の楽器は、現生人類の近縁種であるネアンデルタール人が、6万年前に骨でつくったフルートだ。

 インド中部のビームベートカーの岩陰遺跡にある、約1万年前の最古の壁画には、踊る人々が描かれている。

人に合わせて体を動かすだけで
相手からの好意を引き出せる

 赤ちゃんでさえ、人に合わせて体を動かすことを好む。

 ある研究で、14カ月の赤ちゃんは、ビートルズの曲「ツイスト・アンド・シャウト」と動きが合っていない大人よりも、曲に合わせて動く大人に抱っこされることを喜んだ。

 また、ダンスが終わって、大人が「ついうっかり」ものを落とすと、大人と音楽に合わせて跳ねた赤ちゃんのほうが、大人を助けるようなそぶりを見せることが多かった(注5)。

(注3)‘Overcoming the challenges of effective communication during video meetings’, Hyperia, 16 August 2021, https://hyperia.net/blog/overcoming-the-challenges-of-effective-communication-during-video-meetings (アクセス確認:2023年9月28日)
(注4)Jackson, J . C ., Jong, J ., Bilkey, D . et al. (2018), ‘Synchrony and physiological arousal increasecohesion and cooperation in large naturalistic groups’, Scientific Reports, 8, article 127, https://doi.org/10.1038/s41598-017-18023-4 (アクセス確認:2023年9月28日)
(注5)Cirelli, L. K., Einarson, K. M. and Trainor, L. J. (2014), ‘Interpersonal synchrony increases prosocial behavior in infants’, Developmental Science, 17(6), pp. 1003-11.