つまり、他者と同期運動をすると、他者のことを考えながら行動するから、連帯感が高まり、その結果として幸福度が増すのだ。

普段の何気ない会話でも
相手との同期性を高められる

 他者との同期性を高めるにはどうしたらいいだろう?

 ここまで挙げてきた、ダンスのような集団活動をしたり、一緒に何かのイベントを楽しんだりするのは、たまにしかできない特別なことだ。ふだんの生活でできる方法としておすすめなのが、人と会って話すことだ。

 まず、スマホをしまおう。スマホが視界に入るだけで、社会的交流の楽しさが損なわれるという研究もある(注12)。

 スマホを使っていると、共同活動に身が入らないだけでなく、注意が他のところに向かってしまう。スマホのエチケットに関してはいろいろな考え方があるが、スマホを優先する人が、「あなたより私の関心事のほうが大事だ」というシグナルを送っていることは間違いない。

『LIFE UNIVERSITY もし大学教授がよい人生を教えたら』書影『LIFE UNIVERSITY もし大学教授がよい人生を教えたら』(ブルース・フッド著、櫻井祐子訳、サンマーク出版)

 また、「積極的傾聴」を実践しよう。話すより聞く時間を長くすれば、会話が双方向になり、より円滑に進むことに気づくだろう。人を理解しようとして話を傾聴すれば、人に信頼と関心を持ち、より良好で幸せな人間関係を築くことができる(注13)。

 ある脳イメージング研究で、参加者は積極的傾聴を実践する人を、より好意的に評価した。これには報酬に関わる脳領域である、「腹側線条体」の神経活動の活性化が関与していた(注14)。

 もちろん、会話ではいつも黙っていろ、ということではない。話の内容に集中しながら、相手への関心を示すために、適切な質問をしよう。

 相手を好意的にとらえ、建設的な意見を伝えて、信頼を示そう。そうすればあなたにも好感と信頼を持ってもらえ、互いにポジティブな経験ができる。

 注意を他者に向けると、社会的やりとりの質が高まり、自然に同期化が起こるのだ。

(注12)Dwyer, R. J., Kushlev, K. and Dunn, E. W. (2018), ‘Smartphone use undermines enjoyment of faceto-face social interactions’, Journal of Experimental Social Psychology, 78, pp. 233-9.
(注13)Baker, E. L., Dunne-Moses, A., Calarco, A. J. et al. (2019), ‘Listening to understand: a core leadership skill’, Journal of Public Health Management and Practice, 25(5), pp. 508-10.
(注14)Kawamichi, H., Yoshihara, K., Sasaki, A. T. et al. (2015), ‘Perceiving active listening activates the reward system and improves the impression of relevant experiences’, Social Neuroscience, 10(1), pp.16-26.