赤ちゃんと養育者は、歌を歌ったり、手を叩いたり、踊ったり、跳ね回ったりといった、音を伴う活動を一緒にすることが多い。
こうした活動には、向社会的行動を積極的に促す効果があるため、幼児期のこのような経験は、その後の発達の土台となる。
また、人と一緒に行動すると、より寛大になることもわかっている。
大人を対象とした研究で、一方の群はヘッドホンから流れる同じメトロノームの音に合わせてみんなで一緒に体を動かし、もう一方の群は別々のメトロノームの音に合わせて別々に動いた(注6)。
続いて、共同資金に最大で5ドルまで寄付できるゲームをしたところ、体の動きを合わせようと努力した群のほうが、集団のためにより気前よく献金し、集団のメンバーにより親しみを感じた。
最大額の5ドルを寄付した人は、同期群では半数に上ったのに対し、非同期群では5人に1人だった。
もらい泣きやつられ笑いは
相手との同期化の一種
人と動きを合わせると、気分がいい。だから、懇親会やダンス、音楽、儀式、パフォーマンスといった、人間特有の活動に参加すると、幸福度が高まる。
注目すべきことに、同期化は身体動作だけでなく、脳活動にも生じる。たとえば、感情を掻き立てる映画を一緒に見ている人たちの脳内では、神経細胞の同期発火(編集部注/複数の神経細胞が、ほぼ同時に活動する現象。相手の発する情報に反応してシンクロするときなどに起きる)が見られる。
このことから、感情に人と人を結びつける働きがあることがわかる(注7)。音叉と共鳴するギターの弦のように、人間の脳も互いに共鳴するのだ。
同期化の度合いは、共通理解の度合いを示す指標でもある。
プリンストン大学の神経科学者ウリ・ハッソンは、誰かの話を聞いている人の脳をfMRIでスキャンした(注8)。
(注6)Reddish, P ., Fischer, R . and Bulbulia, J . (2013), ‘Let’s dance together: synchrony, shared intentionality, and cooperation’, PLOS ONE, 8(8), e71182, https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0071182(アクセス確認:2023年9月28日)
(注7)Nummenmaa, L. et al. (2012), ‘Emotions promote social interaction by synchronizing brain activity across individuals’, Proceedings of the National Academy of Sciences, 109(24), pp. 9959-604.
(注8)Stephens, G. J., Sibert, L. J. and Hasson, U. (2010), ‘Speaker-listener neural coupling underlies successful communication’, Proceedings of the National Academy of Sciences, 107(32), pp. 14425-30.







