自分と相手の価値観が
同じだとは限らない

 質問1ですが、成功しやすい人は、なぜ「自分がされて嫌なことは他人にもしない」という話にノーと答えるのでしょうか。

 ここで一部の人は、成功する人は人間性に問題があり、自分がされて嫌なことを積極的に他人にしていると考えたかもしれませんが、それは完全に間違いです。この質問への回答がノーである理由は「自分がされて嫌なことはしない」ではなく「相手が嫌がることはしない」だからです。

 自分にとって嫌なことが相手にとっても嫌なこととは限りません。自分はよかれと思っていても、相手はものすごく嫌がっていることも十分にあり得ます。成功できる人というのは、自分の価値観は一旦横に置いておき、常に相手のことを考えて行動します。その結果が信頼関係につながっていき、最終的には社会的な成功をもたらしています。

 人間というのは、どうしても自分中心に物事を考えてしまう傾向があります。自分がされて嫌なことは人にしないという話は、一見すると美談のように思えますが、現実はそうではないのです。

 物事をよく観察すると分かりますが、周囲の人間が自分と同じ価値観を持っているとは限りません。自分にとっては苦にならず、むしろ楽しいことであったとしても、相手は嫌がっているかもしれないのです。よかれと思った言動によって、実は自身が加害者になり、相手との信頼関係を壊している可能性が十分にあるわけです。

 この話を、今流行している言葉に当てはめると「多様性の尊重」ということになるでしょう。近年はこのキーワードが多用されていますから、言葉としてはなじみのある人が多いのではないかと思います。しかしながら、この言葉の意味を、皮膚感覚にまで落とし込めている人は、それほど多くないかもしれません。

 例えば、職場で下品な会話をすることの是非といった話も、これに関連して考えることができるでしょう。

 ある人は、職場では下ネタも含めて、多少、くだらない話をした方がコミュニケーションがスムーズになると考えています。私もどちらかというとそう思いますが、そのような話題は生理的に受け付けないという人もいるわけです。