――国税当局は相続税評価でどのようなポイントでチェックしているのでしょうか。
大岡:「評価通達通りに計算しているか」という形式的なチェックから、「実態として租税回避目的がないか、租税負担の公平性を著しく害していないか」という実質的なチェックへと、シフトしています。2024年度からの税制改正により、タワマンの相続税評価額は市場価格の最低6割程度に引き上げられました。
これにより過度な節税効果は薄まっていますが、なお一定の節税効果は残ります。しかし、その残った効果を利用しようとしても、裁判例で示されたような「極端な行為」には総則6項が適用されるリスクは高いでしょう。
タワマンはかつて
1億円以上の評価減も望めた
――最高裁判決で否認リスクが高まったタワマン節税ですが、過去にはどの程度の節税効果があったのでしょうか?
大岡:最高裁判決の事例を見ても、被相続人は約14億円のタワマンを、借入金約10億円を原資に購入することで、約6億円の課税価格を2800万円にまで圧縮し、結果として相続税額をゼロにしようと試みていました。このケースでは約6億円相当の相続税評価額の減少が狙われていたことになります。
ここまで高額ではなくても、2024年度の税制改正より以前の相談事例でいえば、都内に住む会社員(当時50歳)の方が相続により多額の預金があったので、ご自身の将来的な相続税対策でタワマン購入を検討されている方がいました。市場価格が2億円のタワマンを購入すると相続税にどう影響してくるかを知りたいというご相談でした。
実際にそのタワマンの評価額を試算したところ、市場価格は2億円であるのに対し、当時の相続税評価額は約5600万円になることが分かりました。
この場合、預金2億円のままでは相続税評価額は2億円ですが、タワマンを購入することで評価額が5600万円に圧縮されます。融資を受けて購入すれば、相続時に債務控除もできるため、さらに相続税を節税できますね。
結論として、預金をタワマンに変えれば、大きな節税効果が期待できる事例はあったんですが、今ではケースによっては難しい可能性がでてきます。







