納税者側は国税庁が定める財産評価基本通達(以下、評価通達という。)に基づき算定したと主張。
一方、国税当局は、評価通達による評価額と時価との著しい乖離が「租税負担の公平を著しく害する」とし、第一審判決では、例外規定であり、めったなことでは適用されないと言われていた評価通達の「総則6項」(この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する)を理由に、不動産鑑定による鑑定評価額を主張。
最高裁まで争いましたが、国税当局が勝訴しました。追徴税額は驚愕(がく)の約2.4億円となりました。
2024年の税制改正で
大幅な見直し
評価通達による画一的な評価よりも、実質的な租税負担の公平性が優先されるという、相続税対策に大きな影響を与える判決となりました。
この判決を受け、2024年の税制改正により、タワマン(区分所有マンション)の相続税評価方法が大きく見直されました。市場価格と相続税評価額の乖離が大きいタワマン高層階などは評価額が引き上げられ、最低でも市場価格の6割程度になるように補正されます。
市場価格と相続税評価額の大きな乖離を利用した過度な節税効果は縮小傾向にあります。富裕層の相続税逃れを防ぐ、新たな相続税の新常識が生まれたのです。では、タワマン節税は危険な相続税対策になってしまうのでしょうか。大岡俊明税理士に取材しました。
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「総則6項」の適用は増加
相続税対策は以前よりも慎重さが必要
――最高裁判決や税制改正など、タワマン節税を巡る変化は今後どうなるでしょうか。
大岡:タワマン節税は、本来不動産投資や居住といった本来の目的を伴う中で、結果的に相続税評価額が下がるという側面を利用するものです。
節税目的「だけ」で、過度な行為に及ぶと、最高裁判決の事例のように「総則6項」が適用され、多額の追徴課税を受ける可能性があります。富裕層の課税逃れが起きないように今後も国税当局は鋭い調査を続けるでしょう。
さらに、近年国税当局は総則6項を非上場の株式評価でも頻繁に適用してきており、特に富裕層の相続税対策はタワマンのみならず、注意深く進める必要があります。







