こうして友人たちに解けない問題を教えてもらっていると、尊敬の気持ちも出てくるもの。自然と次のような会話をするようになりました。
「○○って数学の天才やなあ」
「いやいや、お前も古文の天才やんけ」
10代の男子高校生がケンカでぶつかり合うのではなく 、お互いの学力を認め、褒め合っていたのです。外から見ると違和感を持つ人がいるかもしれませんが、けなし合うよりよっぽどいいですよね。
数学が得意なのに
東大に入るため“文系”に
こうして僕は高校3年間、学校の授業と、友達との助け合いだけで大学受験への道を歩んでいきました。そして仲間たちと同じく東大を志望するようになりました。
ちなみに僕は数学が得意でしたが、高2のときに文系を選んでいます。
「逆じゃない?」とよく言われるのですが、東大の二次試験では文系でも受験科目に数学があり、440点満点のうち80点を占めています。多くの文系受験生が数学で30~50点程度を目指す中、60~80点を取ることができれば合格に大きく近づきます。
逆に理系に進んでしまうと、ライバルも数学が得意なため差をつけられず、ミスしたら終わり。だからこそ数学以外の科目で差をつけなければいけないと考えたのです。
一方、社会は2科目必要で、僕は日本史と世界史を選んだのですが、はっきり言って両方とも致命的に苦手でした。
日本史の入試問題というと、「○○の乱が起きたのは何年でしょう」「この時の江戸幕府の将軍は誰でしょう」といった一問一答形式の問題を想起するかもしれませんが、東大の日本史はまったく違います。
難関私立大のような重箱の隅をつつく難問ではなく、「次の3つの文献を読んで、当時の農村での文化の隆盛と貨幣経済の浸透について150文字で答えよ」といった、その時代の大局観を求める「考える社会」。細かい知識だけでなく、全体像を把握していないと歯が立ちません。
高2の時にチャレンジで受けた高3向けの東大模試で、日本史「2点」、世界史「4点」(いずれも60点満点)を取ったときは、本気で「さて、どうしよう」と思ったものです。
最終的に、限られた時間で教科書を隅から隅まで読んでいる時間はないと判断し、苦手な時代の問題を“捨てる”ことに決めました。







