他の科目も型破りで、例えば国語では、紀貫之の『土佐日記』を原文で読む授業がありました。「男もすなる日記といふものを~」の書き出しで知られる、平安時代に書かれた日本最古の日記文学の一つですが、古文の教科書をそのまま読んだわけではありません。

 写本を見ながら、ふにゃふにゃの仮名文字(崩し字)で書かれた原文そのものを一文字ずつ読み解いていったのです。

 他にも、物理の授業で「相対性理論について語る時間」があったり、期末・中間テストで東大や京大の過去問が出てきたりと、どの先生方の授業も自由奔放で興味深いものでした。

「ぷよぷよ」15連鎖も余裕
灘高で学ぶ自由な秀才たち

 そんな自由な環境の中で、のびのびと学んでいる生徒たちがたくさんいました。

「数学オリンピック」のメダリスト。英語が大好きで洋書をずっと読んでいる男。やたらと将棋が強い奴。物語を書くのが好きな小説家。「ぷよぷよ」で15連鎖を余裕で連発するゲーマー。サックスを吹くのが異様に上手い音楽家。バラの花が似合う超イケメンのドラマー。 

 趣味にも全力投球する一風変わった友人たちばかりでしたが、彼らはみんな、東大志望者向けの実践模試で全国上位に名を連ねる猛者でもありました。

 まさに日本一の環境。勉強ができるだけじゃなく、ユニークな才能や個性を持っている刺激的な仲間たち。彼らと親交を持てたことも、僕にとっては非常に価値のある時間となりました。

 前編で述べたように中学3年間は塾漬けだった僕ですが、灘に入ってからは塾通いへの熱がトーンダウンしました。通学時間が大幅に伸びたことも一因ですが、“新高”の仲間たちが塾に行っている様子がなかったことも大きな理由です。

 学校の授業がハイレベルだったこともあり、「このまま学校の課題だけやっていれば大丈夫」という自信を持つようになりました。 

 ちなみに灘では、生徒が分からない問題を先生に質問するだけでなく、周りの友人たちに聞いている風景をよく見かけました。巷では「勉強の話ばかりしているとガリ勉扱いされる」といいますが、灘は勉強をするのが当たり前。まるで息を吸って吐くように勉強の話ができます。

 特に中学入学組は“新高”よりも学習内容を先取りしていますし、日本全国でも成績上位。「これが同じ学年のライバルのレベルか」と刺激を受けました。