サム・アルトマンは何に焦っているのか
振り返れば2022年11月、オープンAIがChatGPTを発表した。25年10月、ウェブ版AIの訪問者数はChatGPTが約11億人、グーグルのジェミニは約1億5300万人、アンソロピックのクロードは約6000万人とみられている。ChatGPTの利用者数は1日に約8億人との試算もある。
ユーザー数を見る限り、現時点でオープンAIは生成AI分野で独走状態だ。ただし、その状況は少しずつ変化している。中でも、グーグルの猛追が顕著だ。
グーグルは、画像生成AIの「ナノバナナプロ」、そしてジェミニ3を相次いで発表した。ジェミニ3はChatGPTよりも応答速度が速い。テキスト、イメージ(画像)、音声、動画、プログラミングコードなどマルチな対応能力も高いといわれている。
今のところ、トランプ政権はグーグルに事業分割を求めていない。それは、グーグルが検索事業などで獲得したデータを使い、AIの推論能力向上に取り組むために有益だ。グーグルがAIチップの外販を本格化したことも、アルトマン氏の危機感をあおっただろう。
オープンAIも、ChatGPTに適したチップの開発に取り組んでいる。アルトマン氏はその外販を本格化し、AI関連市場でのシェア拡大を狙っている。しかしグーグルが先んじてAIチップを市場に投入し、エヌビディアからシェアを奪還しようと先手を切った。
グーグル以外の競合の追い上げも熾烈だ。12月上旬、メタ(旧フェイスブック)は、仮想現実(VR)関連予算を最大30%、削減する可能性があると報じられた。それはつまり、VR予算を削減して資金を捻出することで、グーグルのAIチップを大量に調達し、ASI(人工超知能)の実用化を急ごうとしているとみられる。
アマゾンも、自前のAIチップ「トレーニアム4」を開発していると表明した。AIモデル「ノヴァ」のアップデート版、4タイプの提供も始めている。外部AIやクラウド事業連携、ソニーをはじめとする外部企業のAI開発支援も強化している。
オープンAIからシェアを奪いたい米IT企業によって、モデル開発競争は熾烈を極めている。







