オープンAIの独走はいつ崩れる?再編の可能性

 今後は、オープンAIの独走は崩れると予想される。中長期的には、AI関連分野の成長期待は依然として高い。新規参入、推論モデルの開発、AIの学習プロセスに特化する企業などが出現することで、オープンAIを取り巻く事業環境は大きく変化するだろう。

 さらに重要な課題にも直面している。それは、著作権を巡る訴訟、安心・安全なAI開発を重視する研究者の離職などだ。

 AIは、産業界にも重大なインパクトを与えている。AIを頭脳として使う、人型ロボット(ヒューマノイド)関連分野だ。12月に東京で開催された「2025国際ロボット展」では、日米の企業よりも中国の人型ロボットの華麗なダンスが注目を集めた。ロボット以外にもAIデバイスを開発し、新しい需要創出に取り組む企業は増えるだろう。

 AIが影響を与える分野が拡大する一方で、オープンAIでさえ事業運営の不確実性が高まっている。アルトマン氏は、今のうちに推論性能の向上や半導体開発スピードを引き上げ、収益を拡大しないと同社の優位性を維持できないと考えているはずだ。状況次第では世界的なM&A、再編劇が起きる可能性もある。

 アルトマン氏の危機感は、わが国企業にとって決して他人事ではない。日本はIT化、デジタル化に乗り遅れた結果、米GAFAMに当たるビッグテックは見当たらない。ここまで差が開いてしまった今、日本企業が彼らを追いかけるのは正直かなり難しいだろう。

 AIチップ、ヒューマノイド分野での出遅れが、日本経済の復活に致命的な影響を与えかねない。

 現在、ラピダスを筆頭に半導体分野の競争力回復・向上に取り組んでいるが、研究開発体制を世界トップレベルに拡充するのは必要不可欠だ。この成否は、今後の日本経済の展開にかなりの影響を与える。迅速に意思決定し動くことが欠かせない。

真壁昭夫・多摩大学特別招聘教授のプロフィール