中国勢の猛追「デジタル・シルクロード」構想も
アルトマン氏は、中国企業が急速にAIモデル開発を加速していることにも危機感を高めているはずだ。11月下旬、AIモデル開発で、中国が米国を追い抜いたことを示唆する調査結果が公表された。米マサチューセッツ工科大学と米AI新興企業ハギング・フェイスによる分析である。
それによると、24年8月から1年間、オープンソース型のAIモデルのダウンロードシェアで、中国の新型モデルは17.1%を獲得した。米国は15.8%だった。人気が高かったのは、ディープシークの「R1」、新型モデルの「V3」シリーズ、および画像生成モデルの「ジャナスプロ7B」。アリババの「千問」も人気が高かった。
中国政府は国内AI関連企業に対して、エヌビディアのAIチップを利用することを制限し、中国製のチップ使用を求めている。さらに政府は関連企業の研究開発を手厚く支援し、AIの幅広い利用を促進している。その結果、中国企業は無料で最新モデルを公開し、オープンソース体制でモデルの性能向上に取り組んでいる。
11月、アリババはAIアプリ千問のベータ版を公開。わずか1週間でダウンロード数は1000万件を突破した。月間のユーザー増加率としては、世界トップを記録した。ティックトックの運営会社バイトダンスによる「豆包」も急成長している。
半導体分野でも、中国勢の成長が目覚ましい。12月5日、エヌビディアの元幹部が設立した画像処理半導体(GPU)の開発企業、摩爾線程(ムーアスレッド)は、上海証券取引所の新興企業向け市場の科創板に上場した。初値は公開価格の5倍超を付けた。
アリババもAIチップ開発体制を拡張している。バイドゥも、AI半導体部門の株式新規公開を検討中のようだ。
中国政府は11月26日、1兆元(約22兆円)規模を投じて消費財分野でのAI利用促進策を打ち出した。東南アジア、中央アジア、中東など一帯一路の沿線地域で「デジタル・シルクロード」構想を推進し、中国製AIモデル、半導体の利用は急拡大している。







