直近の首都圏の大型物流施設における空室率は10%を超える水準となっている。さらには、空室率データに反映されない「潜在空室」の存在も指摘されている。

 例えば物流会社が、施設を賃借後の貨物の集荷がはかどらない、転貸先が見つかっていないケースもあり、これらは実質的には「空室」と言える。この他に、いったん賃借したがその後、テナントが施設を退去している場合もあり、需給バランスの実態を把握するには、こうした「見えない空室」にも注意を払う必要がありそうだ。

図表:首都圏のマルチテナント施設数首都圏のマルチテナント施設は2027年に需要超過へ(CBRE資料より)
拡大画像表示

トレンド(2)
ドライは供給過剰?
特殊倉庫の開発が活況

 危険物倉庫や冷凍冷蔵倉庫といった特殊倉庫の開発がにわかに活発だ。近年は、ドライ倉庫は供給過多ぎみでリーシングが難しくなっている。それに加え、建築費が高騰する中で、特殊倉庫は高付加価値施設として賃料に転嫁しやすい。潜在需要も見込まれ、コストの回収に期待が持てることから、デベロッパー各社がこぞって開発に乗り出している。

 リチウムイオン電池や半導体材料などの保管需要を見込んで開発が増えているのが危険物倉庫だ。消防法の制約により土地利用の効率性に課題があるものの、原則として平屋建てであることから開発コストを抑えることができる。また、ドライ倉庫に併設し、セット貸しによりリーシングに成功する例も見られる。

 ただ、足元ではEVなどに利用される車載型リチウムイオン電池の荷動きが鈍化傾向にあり、需要エリアが限られていること、リチウムイオン電池の保管規制緩和の動きなどから、特需への期待はややしぼみつつある。

 冷凍食品の保管需要増などを追い風に、冷凍冷蔵倉庫の開発も増えている。既存倉庫の老朽化や2030年の冷媒フロン規制への対応が求められる中で、建築費の高騰などを理由に、自前で建設せず賃貸型を利用する事業者が潜在的に見込まれることも活況の要因だ。

 ただ、賃貸用冷凍冷蔵倉庫の賃料はドライ倉庫の2倍とも言われており、食品という単価の安い貨物を扱う事業者が高い賃料を払って採算を取れるかどうかも課題とされる。高い賃料に見合うビジネスモデルを展開しているテナントの取り込みがカギとなりそうだ。

>>トレンド(3)(4)(5)についてはカーゴニュース本編をご覧ください。

物流の専門紙 カーゴニュース https://cargo-news.online/ 「オンライン版」もスタートしました!