EカーがもしこれまでのL6、L7クアドリシクルに毛が生えたようなものになるのなら、日本勢はこの動向を無視して構わないだろう。動力源を完全に電気に限定する場合も、バッテリー性能が容量の小ささを無視できるくらいに進歩するまでは深く関与する必要はない。

 しかし、EカーがBEVだけでなくHV、あるいは高効率ならシンプルな内燃機関もOK、となれば話は別だ。クルマとしての能力、コストの両面で、新興国も含めたグローバルな小型車の、新たなデファクトスタンダードになり得る。

トヨタは規格作りをリードするか

 日本勢で欧州自動車工業会に加盟しているのは、自社では軽自動車を手がけていないトヨタ自動車のみで、規格策定に積極的に関与するモチベーションは低いだろう。が、日本の軽の技術力を生かす絶好のチャンスなら、規格作りをリードすべきだ。

 Eカーは普通乗用車と明確に区分けするため、車体サイズや原動機の出力ないし排気量に厳しい枠を設定するはずだ。欧州は、日本の軽の規格そのままではなく、独自の規格にすると言っている。技術や欧州の道路環境を考えると、全長、全幅が日本の軽に比べてひとまわり大きくなりそうだ。

 実は、車幅は日本の軽のボトルネックだ。衝突安全性テストをクリアしているものの、左右の車輪の間隔が狭いので、安定性を上げるのに限界がある。

 ところが車幅を1.6mまで認めると、今度は全長3.6m、全幅1.6mの「韓国版の軽自動車」作りでノウハウを蓄積している韓国メーカーのヒョンデやキアが乗り出す余地が大きくなる。

 新規格が全長3.5m、全幅1.55m、排気量800ccくらいに収まると、日本勢は俄然やりやすくなる。クルマ作りは大きなものを縮小するより、小さいものを拡大するほうがラクだ。より小さなサイズで衝突安全性をクリアし、快適性も飛躍的に上げている日本の軽自動車メーカーがEカーを作れば、素晴らしいクルマになるはずだ。

スズキ「アルト」スズキ「アルト」。区間燃費は最高で40.2km/lを記録。製造時のCO2の少なさを考えると、大型車からこれに乗り換えるだけでCO2削減目標が達成できる計算に Photo by K.I.