もう1つ、重要な仕掛けがあった。
半数の人は実験のことを人に話さないように言われた。残りの半数の人は、実験のことをソーシャルメディアのフォロワーに話したり、お金の一部を使うたびに投稿したりするように言われた(コントロールグループとして、少額の料金で調査に回答するだけの人が100人いた。彼らは不運だったが、実験に重要な科学的正当性を与えてくれた)。
善意でもらったお金は
自分以外に還元したくなる
結果は本当にエキサイティングだった。
「不思議の実験」資金を受け取った200人の大多数は、資金のかなりの割合を他者に与えるという反応をしたのだ!
平均で見ると、自分の欲しいものや必要なものに使われた資金は3分の1にとどまった。残りは、友人や家族、そして社会問題のために提供された。
最も収入が低く、受け取った額が人生を変えるようなものだった人たちでさえも、やはり平均で受け取った額の3分の2を提供した。
これは、経済学のいわゆる「合理的行為者理論」に反する、説得力あるエビデンスだ。この理論によれば、人は単純に、おおむね自分のためにお金を使う。
おそらく、自分が稼いだお金ならそうするのだろう。だが、他者による利他行為の受け手となったときには、同じように利他で応えたいという強い願望を感じることが明らかになった。
また私たちが驚いたのは、誰にも言わずに資金の使い道を決められた人と、ソーシャルメディアでシェアしなくてはならなかった人の間に、有意差がなかったことだ。
つまり、資金を提供したのは、オンラインのオーディエンスから社会的承認を得たいからではなく、受けたものと等価のものを返したいという自然な気持ちからだった、ということになる。
参加者たちに芽生えた
恩を返したいという気持ち
実験が終了した後、私は何人かの参加者にコンタクトをとり、彼らの話に衝撃を受けた。
インドネシアに拠点を置くクリエイティブ・ディレクターのリディア・タリガンは、受け取った1億4000万インドネシア・ルピアのうち、ほぼ全額を直接自分のためには使わなかった。







