2年ぶりに走った「白いロマンスカー」…大人気なのに“短命”だった意外な理由とは?小田急ロマンスカー50000形「VSE」 Photo:PIXTA

小田急電鉄は12月6日と7日、神奈川県相模原市の大野総合車両所でロマンスカー50000形「VSE」の「お別れ見学会」を開催した。バブル崩壊後の箱根観光需要低迷でロマンスカーは通勤特急色を強めていったが、白い車体に展望席を備えたVSEは観光列車としての人気を再燃させた。2023年に引退したVSEの本線走行は2年ぶり。ロマンスカーの「中興の祖」とも言える車両が、なぜわずか18年で引退に至ったのか。そして2029年にデビュー予定の後継車両はどのような姿を目指すのか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

箱根観光需要の減少により
「通勤特急」色を強めたロマンスカー

 ロマンスカー50000形「VSE」は2022年3月に定期運行を終了し、以降はイベント列車として運行され、2023年12月に完全引退した。

 VSEは2編成が喜多見検車区で保存されていたが、第1編成の先頭車両をロマンスカーミュージアムに展示(2026年3月下旬公開予定)し、2~10号車を廃車解体することになり、大野総合車両所への回送列車として2年ぶりに本線を走行した。なお、残る1編成は本線上を走行可能な状態で動態保存する方針で、具体的な活用方法はこれから決めるという。

 2027年に開業100周年を迎える小田急にとって、ロマンスカーは特別な存在だ。1935年に運行開始した新宿~小田原間ノンストップの温泉急行をルーツとして、1949年に「ロマンスカー」と称する専用車両が初めて登場した(ロマンスカーは小田急の登録商標だが、かつては京阪や名鉄、東武なども使用する一般名詞だった)。

 1957年に画期的な低重心・軽量の流線形車両3000形「SE」、1963年にSEを発展させて展望席を設置した3100形「NSE」を導入し、ロマンスカー黄金時代が始まった。しかし、バブル崩壊後は箱根観光需要に陰りが見え始め、通勤利用者をターゲットとする朝夕の通勤特急としての性格を強めていった。