小田急電鉄は6月28日、神奈川県海老名市で運営する「ロマンスカーミュージアム」が同21日付けで博物館法の「登録博物館」として登録されたと発表した。大手私鉄で同種の施設がある中で、事業におけるメリットがほとんどない「登録博物館」を目指した小田急電鉄の狙いとは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
ロマンスカーミュージアムを
登録博物館として登録
小田急電鉄は6月28日、神奈川県海老名市で運営する「ロマンスカーミュージアム」が同21日付で博物館法の「登録博物館」として登録されたと発表した。
これには正直、ちょっと驚いた。ロマンスカーミュージアムは小田急のイメージリーダーであるロマンスカーを中心とする「マーケティング・コミュニケーション」あるいは「ブランディング」の性格が強い施設だと理解していたからだ。
いわゆる「博物館」は、博物館法に基づく「登録博物館」と「博物館相当施設」に分類され、同法によらない施設を「博物館類似施設」という。ただこの区分が意識されることはほとんどない。
例えば鉄道関係の大規模施設として、JR東日本の「鉄道博物館(さいたま市大宮区)」、JR西日本の「京都鉄道博物館(京都市下京区)」、JR東海の「リニア・鉄道館(名古屋市港区)」があり、JR系3大博物館と括られる。
しかし、鉄道博物館は登録博物館、京都鉄道博物館は博物館相当施設、リニア・鉄道館は博物館類似施設となのだ。これら施設の性格がどう異なるか説明できる人はいないだろう。筆者が調べた限り、鉄道関係の登録博物館は鉄道博物館と東京メトロの地下鉄博物館のみ。ロマンスカーミュージアムは博物館類似施設の位置付けだった。
大手私鉄の同種の施設としては、東急電鉄が1982年に創立60周年を記念して開設した「電車とバスの博物館」、東武鉄道が1989年に開業90周年を記念して開設した「東武博物館」、京王電鉄が2013年に開業100周年を記念して開設した「京王れーるランド」があり、いずれも地下鉄博物館より規模が大きい。
それでも登録博物館を目指さないのは、得られるメリットがほとんどないからだ。各館が周年記念事業として設置されたことからも分かるように、企業の理念や事業内容を伝えるコーポレーション・コミュニケーションのための施設であり、それ以上の(場合によっては足かせとなる)肩書は必要性に乏しいのだ。
そのような中、小田急がロマンスカーミュージアムを登録博物館に「格上げ」したのは、ロマンスカーという小田急の象徴を、単なる企業博物館の枠にとどまらず、ひとつの文化として伝えていくという決意の表れとして評価したい。