【シースルー】18世紀後半からヨーロッパで女性の間でじわ流行り。

 文化人が度々「慎みがない」と批難。19世紀はシースルーの下の下着や乳首などが見えないように配慮する傾向。20世紀に入るとアメリカではシースルー着用者を逮捕するという話が出たり、オーストラリアの新聞でシースルーに強く反対する社説が掲載されるなどする。

 1968年にイヴ・サンローランが手掛けたシースルールックが注目を浴び、現代のシースルールックの礎を作る。現代のシースルールックはカジュアルからフォーマルへと幅広く利用されている。

【ミニスカート】1960年中盤以降、イギリスの若者の文化革命・「スウィンギング・ロンドン」(「スウィンギング・シックスティーズ」とも)で大流行。

 当時女性の服装はウエストがキュッと絞られてスカートが大きく広がる伝統的なスタイルが本流だったから、全体のシルエットからして大きく違う上に膝、腿をあらわにするミニスカートやミニのワンピースは衝撃的だった。

 若者に支持されながらも、上の世代からは「品がない」と大ヒンシュクを買い、各地で着用が規制・禁止されたりした。特にアフリカでは多くの政府がミニスカートに激しく反対した。

 以上、3つとも女性のファッションで、女性が自由を獲得したり、「露出=男性への媚び」でなく「露出=女性の自己表現」などの概念のアップデートなど、その時々で社会的な意識変革と連動したムーブメントとなっている。

スキニージーンズが果たした
価値観ののアップデート

 また、これは露出方向ではないが、2000年代にトレンドとなったメンズの細めのジーンズ(スキニージーンズ)も、出た当初は「女っぽい」「気持ち悪い」とさんざん言われた。

 それまでの男性像といえばタフでマッチョとか「男らしい」のがあるべき姿で、スキニージーンズはユニセックスで「男らしく」なく、ちゃんちゃらおかしいということでタイム誌やニューヨークタイムズ紙などの主要メディアも揶揄したのであった。

 しかしインディーズバンドなどのサブカルチャーがブームを牽引した。

 既存の価値観への挑戦となったスキニージーンズは、LGBTへの理解の深まりやジェンダー観(特に男性)のアップデートにつながったのであった。

 ぴっちりアスレジャーが世界各地で反発を招いている構図は、上記のビキニやシースルーといったアイテムが巻き起こしたそれと同じである。

 これらを参考にすると、(アスレジャーのトレンドの強さにもよるが)今後流行りが大きくなっていくなら、受け入れ側の価値観の刷新とともにアスレジャーは受容されていく公算が大きい。

 そうなった場合、アスレジャーはどういった概念とリンクして、どういった社会的意義をもたらすのか。女性の権利や女性性を男性から取り戻す(男性への媚びではなく自己表現としての露出)役割は含まれそうである。

 あるいは健康美、健康を美徳とする価値観ともリンクするかもしれない。こういったことを予想するのも知的なゲームに興じているようで楽しいものである。

 それか、コロナ禍以降の巣ごもり需要の高まりと連動した形で、「部屋最高→部屋着最高」なるトレンドが定着する可能性もあるか。であるなら、真のよれよれの部屋着で港区の盛り場を徘徊した過ぎし日の筆者も報われるような気がしないでもない。

 女性のぴっちりアスレジャーのトレンドはどの程度の広がりを見せるか。当面はその勢いに注目である。