もしも間に合わなかったら、会社の信用にかかわるのはもちろん、経営的にも痛手です。コンサルティングは「このプロジェクトにはだいたいこのくらいの時間がかかる」という総時間によって費用の見積もりを立てることが多いので、それ以上に時間がかかるとそのぶんは持ち出しになってしまうことになるのです。時間管理は経営者にとって非常に重要な能力といえます。
「楽観バイアス」によって
甘い見通しを立ててしまう
では、なぜ計画の誤謬が起きてしまうのでしょう。人間はどんな計画を立てる場合でも、所要時間や予算を甘く見積もってしまう傾向があるからです。残念ながらこれはさまざまな研究で証明されている事実です。
その原因の1つが「楽観バイアス」です。これは言葉どおり、物事を楽観的にとらえてしまう認知のクセのことを指します。「だいたいこのくらいで終わるだろう」と事前に想定する時間は、かなり自分の理想がまじっているということです。
もう1つは「解釈レベル理論」です。これは時間的・空間的・心理的・社会的な距離が遠ければ遠いほど、具体的に物事を考えられなくなるという理論。今日、明日やることは具体的に考えられても、1週間先、1カ月先のことは漠然としているため「なんとかなるだろう」と都合のいいように考えてしまうのです。
夏休みの宿題をギリギリまでためてしまって、半泣きになりながら片づけるのも、テスト勉強が一夜漬けになってしまうのも、長期休暇の前に徹夜で仕事を片づけなくてはいけなくなるのも、すべて人間がもつ認知のクセのせいなのです。
ある研究では、プロジェクトで実際にかかった日数を比較した場合、「楽観的なシナリオの場合にかかる日数」よりも、「最悪なシナリオの場合にかかる日数」に近いことがほとんどだったそうです。しかもそのうちの10%は、それでも間に合わなかったというのだから、計画倒れしがちなのも当然のことです。







