「それがまた大きなヒントだったんだ」とサヒルは言った。「何が起きたのかは明白だね。僕が彼を驚かせたってことだ。それに、僕がもらった答えはかなり示唆に富んでいるよ」
その年の後半に、サヒルは「イーロン・マスクがビットコインを発明した可能性がある」というブログ記事を書いた。彼はテラーと交わしたプライベートな会話については省略したが、彼が見つけた他の類似点については詳しく説明した。
そして彼は、ビットコインの技術をどのように主流化すべきか、またそもそも主流化すべきかどうかをめぐって分裂していたビットコインコミュニティに対して、創設者が戻ってきて導いてくれれば良い方向に向かうだろうと主張した。
いくつかの暗号通貨関連のブログがサヒルの説を取り上げ、ブルームバーグもそれを報じた(注5)。
ただマスク自身は、「違うよ。数年前に友人がビットコインの一部を送ってくれたけど、それがどこにあるかはわからない」とツイートしている(注6)。
ナカモトとマスクの性格は
たしかに似ているが…
サヒルは、初期のビットコイン開発者たちがナカモトを「高圧的」だと思っていたことを知った。マスクはその通りの人物だった。
そしてツイッター買収騒動以前、マスクのブランドイメージはどのようなものだったろうか?それは「難しいことを成し遂げる」だった。電気自動車をクールなものにすること、ロケットを発射台に着陸させること、といった具合である。
私にはいくつか疑問があった。マスクは確かに非凡な才能を持つ人物だったが、彼が借金を抱え、離婚し、ファルコンロケットの打ち上げが3回連続で失敗した2008年については、人生で最悪の年だったと語っている(注7)。
一方ナカモトは、2008年にビットコイン・ホワイトペーパーを公開している。
マスクが電気自動車産業と民間宇宙企業の成功に全力を注いでいた時期に、世界初の実用的な暗号通貨をつくり出し、さらにその後2年近くにわたってそのソフトウェアプロジェクトを個人で管理する余力があった、などということがあり得るのだろうか?
(注5)Nour Al Ali and Chris Kingdon, “Musk:I Am Not Bitcoin’s Satoshi Nakamoto,” Bloomberg News, November 28, 2017.
(注6)@elonmusk, Twitter, November 27, 2017.
(注7)Scott Pelley, “Fast Cars and Rocket Ships,” 60 Minutes, March 30, 2014.







