そのヨナタンが1976年、ウガンダのエンテベ空港で起きたハイジャック事件の人質救出作戦で命を落とした。これによりヨナタンが国民的英雄になり、ネタニヤフには「英雄の弟」という箔がついたのです。
たしかにネタニヤフは、安全保障に不安を抱くイスラエル国民による「強いリーダー」待望の期待に応えて誕生した首相です。そして長年にわたって安全保障上の脅威と対峙し、またアメリカとの関係強化やアラブ諸国との和平に取り組んできた実績もある。
ただ、2023年10月のハマスによる攻撃で、251人のイスラエル人が人質に捕られていますが、まだ全員の解放は実現していません。これはネタニヤフの兄が自らの命と引き換えに100人以上の乗客を救った英雄的行為とどうしても比較されてしまいます。
政権を維持するために
戦争を続けざるを得ない?
小谷:さらに近年は、収賄容疑や権力の私物化などでもネタニヤフへの批判が高まっています。2022年の議会選挙の結果を見ても、党首を務める与党リクードは全120議席中32議席と約4分の1しか獲得できませんでした。
そのためネタニヤフは現在、極右政党、宗教政党との連立を組んで政権を維持しています。イデオロギー的に右傾化した連立政権で、それゆえに戦争をやめられないわけです。彼らは当然「ガザは我々のものだ」と思っているでしょう。
ただ、仮にイスラエルがガザ全域を掌握した場合、最大の問題は約220万人のパレスチナの人びとをどうするかです。もし彼らをイスラエルに取り込むとすると、人口1000万人弱の国に220万人の反対派を抱え込むようなもので、国として成り立たせるのは相当難しいはずです。
小泉:シリア難民100万人を受け入れた欧州では、逆に反移民感情が非常に高まりましたよね。欧州で極右が伸びている背景の1つもこれでしょう。
トランプ米大統領は「パレスチナ住民を域外に永久に移住させる」と発言しましたが、そう簡単に事が運ぶ問題ではありません。しかし現在のイスラエルの連立政権の姿勢からすると、ガザを完全に制圧するまで同地区に対する攻撃をやめる気はないのではないでしょうか。







