小谷:そうです。だから現在、右派を集めてとりあえずは過半数を獲得し、政権を維持している。そしてこの連立を維持するためには、ガザを奪い取るような強硬な姿勢を見せなければいけない。
実際ネタニヤフ首相は、ハマスに捕えられている人質を取り戻すことよりも「ハマス殲滅」を優先するような言動をしばしば見せています。ただ、それがまた国民の強い反発を買う要因になっているわけですが……。
国民は戦争を終わらせたいのに
ネタニヤフを降ろすことができない
小泉:「民主的な独裁者」というイメージでしょうか。プーチン大統領もそうです。一応合法的に選挙で選ばれて、法の穴を突くようなハックを行ない、2020年まで命脈を保ってきた。2020年以降はとうとう憲法自体を変え、従来2期までとされていた大統領の任期をリセットして新たに最長2期12年、大統領の座に就けるようにしました。
ロシアやトルコ、イスラエルを見ていると、「民主主義的な制度の中から生まれた独裁者」が増えてきたと感じます。
小谷:ただネタニヤフは、強硬なポーズをとってはいますが、独裁というほど強くはありません。
現在の首相後継の最有力候補は、元国防軍参謀総長のベニー・ガンツです。彼の立ち位置としては中道で、ハマスに対して批判しつつも二国家解決(イスラエルとパレスチナ双方が独立した国家として共存するという構想)に柔軟な姿勢を見せています。
『戦闘国家 ロシア、イスラエルはなぜ戦い続けるのか』(小泉 悠、小谷 賢、PHP研究所)
小泉:与党は戦争を継続するつもりだけれど、国民を含めて野党はどちらかと言えば戦争停止を望んでいるということでしょうか。
小谷:ええ。イスラエルは国民皆兵なので、このまま戦闘が続けば国民は兵士として前線に送られ続ける。また人質もまったく返ってきていない。イスラエルの一般市民にとっていいことがないわけで、喜んでいるのは右派だけです。
小泉:なるほど。でも国民はネタニヤフ首相を引きずり下ろすことはできないわけだ。
小谷:そうです。ですから、次の総選挙までは、いまの状態が続くのではないでしょうか。そこでもしネタニヤフ首相が敗北したら、イスラエル・ガザ戦争もいったんは収束の方向に動き出すかもしれませんが、事態の収拾はそう簡単ではないですね。







