「新NISAで損する瞬間」超意外なワースト1とは?
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』を出版し、遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを聞きました。
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「新NISAで損する瞬間」超意外なワースト1とは?
本日は「相続と株」についてお話をします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
2025年に入ってからのトピックスとしては、相続とNISAの関係も挙げられます。「亡くなった方がNISAを利用していた」というご家庭に、何件かお会いしました。実は、NISA口座で保有している資産については、場合によっては損をしてしまうケースもあり得ます。
新NISAが非課税で魅力的に見える一方で、実はNISAには「損益通算」と「繰越控除」が使えないという大きなデメリットがあります。
損益通算とは、例えばA株式で100万円の売却損が出たときに、B株式で得た売却益と相殺できる制度です。そしてその年で控除しきれなかった損失を、翌年以降3年間繰り越して控除できるのが繰越控除です。特定口座や一般口座であれば使えるこれらの制度が、NISAでは利用できません。
つまり「儲けが出たときは非課税だけれど、損失が出たときは救済がない」というのがNISAの本質。特定口座や一般口座に比べると、ハイリスク・ハイリターンな制度とも言えます。
相続時の扱いと不利になるケース
さらに、相続が発生した場合にはNISA特有のルールが適用されます。相続税の評価では、NISA口座・特定口座・一般口座いずれも、被相続人の死亡時の時価で評価されます。ただし、NISA口座の場合、相続人が将来その株式を売却する際の「取得価額」の扱いには違いがあります。
被相続人が亡くなった時点での評価額が相続人の取得価額となり、含み損は切り捨てられてしまいます。例えば父が300万円で買った株式が200万円まで値下がりしているときに亡くなった場合、相続人は200万円で取得したことになります。その後株価が元の300万円に戻って売却すると、差額の100万円に税金がかかることになります。
一方、特定口座や一般口座で運用していた場合には、相続の時点の株価は関係なく、父が300万円で買った株は子も300万円で取得したことになります。株価が300万円に戻って売却しても譲渡益は0円で、課税はありません。このように、NISAで運用していたほうが、かえって税金面で不利になることもあるのです。
こうしたデメリットをご存じない相続人の方も多く、「非課税だから得だと思っていたのに……」と、少し戸惑ったご様子を見せられる方もいらっしゃいました。「非課税だから必ず有利」というわけではなく、制度の仕組み上、そうとも言い切れない場面があるという点は、なかなか一般の方には分かりづらいところかもしれません。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)







