……それだけ聞くと、恐ろしい話だと背筋がぞわっとしてくる。しかしなんとなくわかる。たしかにショート動画は記憶に残りづらい。ただ、刺激だけがある。
短尺動画に埋め込まれた
感情の起伏を呼び起こすスイッチ
が、何よりも興味深いのが、この報酬の問題だ。
令和のコンテンツにおいて「報われる」度合いが高ければ高いほどヒットしやすい。
仕事でも趣味でも「報われポイント」が必要になり、報酬の受け取りやすさが重要になるのである。だとすると「ショート動画は何も報われないのでは?」と思う方も多いかもしれない。
しかしじつは、ⅩやInstagramで得ていた「評価」や「情報」という報酬よりも、TikTokで得られる「刺激」という報酬は、受け取りやすいのだ。
「報われたい」という感情は、行為そのものの楽しさや面白さといった感情の揺れ動きだけではなく、行為の見返りや正解がもっとほしい、と求めることである。仕事や趣味自体の楽しさの実感だけではなく、仕事や趣味をやった意味があって初めて、充実した時間だったと感じることができる。
短い動画を見る時間はまさに、1つひとつの短い尺の中で、笑えるポイントやスッキリするポイントが小刻みに現れる。1分や2分の中で見た動画ごとの何かしらの「報われ」は存在する。
刺激が小刻みに与えられ
気づけば時間が溶けている
『考察する若者たち』(三宅香帆、PHP研究所)
Xのようにテキストで意思を伝えるものではなく、Instagramのように画像で表現をするものでもない。TikTokは、ただアルゴリズムがショート動画をおすすめする装置である。ここで言うアルゴリズムとは、ユーザーの好みを機械学習し、それによって表示する情報や広告を変えるシステムのことである。
私はこの点こそ面白いと感じる。
TikTokには、積極的な好き嫌いがなくてもいいし、自ら進んでフォローしにいかなくてもいい。自分の意思や趣味嗜好は、はっきり言ってなくてもいいのだ。
動画を見た意味を小刻みに与えてくれる。実際にどれくらい面白いか、感動したか、という感情の振れ幅は重要ではない。報われポイントが動画ごとにたくさん存在する。
その時間感覚が、ショート動画の特徴である。







