引き継ぐときに必要なことは
言語化して、一つ一つ説明すること
――それで2022年の時点で、2026年に社長交代をすることを宣言して、引き継ぎを着々と進めてきたのですね。引き継ぎにあたって社長の意思決定を追体験するリクルートマネジメントソリューションズの研修も取り入れたそうですね。
藤田 そうですね。リクルートの研修も取り入れました。また、それとは関係なく社長交代に成功した企業としてもリクルートは参考に見ています。創業者がいなくなってもすごい勢いで伸びました。
創業者の会社を引き継ぐ上で一番重要なことは、引き継ぎ可能な会社にしていくことで、力を入れたのは自分が今までやってきたことを言語化し、それを一つ一つ説明することでした。
引き継ぎ書を自身で執筆したのですが、今回発売した「勝負眼」は引き継ぎ書の内容に肉付けした項目も多くあります。社長交代に当たりこういった経営の引き継ぎ書を作成した理由は、代々社長が代わるような会社だと、意思決定をする前にその根拠を様々な人に説明しなければいけない場面がけっこうあるはずなのに、それがないままここまで来てしまったからです。
私自身、今までの経験や勘から決断した意思決定を、誰かに説明する必要もなくなってきていました。長く社長を務めてきたからこそ、これまでの実績や信頼から、私が「これをやろう」と決めたら「分かりました」という感じでスムーズに進むような会社になっていたのです。そのため、まずはどのように意思決定をしているのか、言語化するところから始めました。引き継ぎ書、そして「勝負眼」の執筆を経て自身の考えを整理し、言語化する過程で、自身も成長したと感じます。
「部下に任せるより自分でやった方が早い」
という管理職は問題なのか?
――様々な創業社長に取材していると、感覚で語る方も多くて、言語化されていない暗黙知で意思決定がなされていても、その社長の人格だから成り立っている部分があるような気がします。
藤田 そうですね。人格でもあるし、その本人の総合プロデュースの中ではつじつまが合っているということなのだろうと思います。会社にいる社員やカルチャー、市場、お取引先など、そのすべてからどう判断しているかを全て説明しきるのは難しいので、逆にいうと説明しなくても済む状態のほうがやりやすいのでしょう。
――藤田さんは100項目以上にわたる引き継ぎ書をご自身で作成され、講義をして、3年半かけて引き継ぎました。しかし創業社長だけでなく、世の中には「いちいち言語化して引き継ぐよりも、自分でやった方が早い」と思って仕事を部下に任せられない管理職もいます。







