藤田 そういう感覚に陥ったことはないです。基本的に私の立場は連結経営の社長なので、社員の誰かが自身で決断し、結果を出して、それによって会社を成長させてくれたら最高です。規模が大きくなったら、すべての事業に対し、そんなに細かく全部を自分で見ることはできません。
会社を変革させるような事業とか、新しい分野は自分でやることもありますが、基本的には任せて、言い訳ができないほど本人に選ばせるようにしています。「自由と自己責任」と言っていますが、これをやったら成功するはず、と社員が提案してきた新規事業を実際に立ち上げることになったら、こちらはサポートする側に徹し、言い訳をさせない状況を作っていく感じですね。
サイバーエージェント創業者の藤田晋会長 Photo by Shogo Murakami
――藤田さんから見ると、答えが見えている場合もあるんじゃないですか。
藤田 いや、ないですよ、そんなことは全然ないです。
それにやっぱり人は自分のアイデアをかたちにするときに一番やる気を出すんです。例えば部下が「これをしたら成功すると思います」と、新規事業を私に提案してきたとします。
新規事業って、そもそも正解があるのかどうかも分からないけれども、やるからには成功して欲しいので、できるかぎりの後方支援をします。それで結果を出してくれたら最高ですよね。
自身の考えや決断の元、のびのびやりたいと思っている人にとって、サイバーエージェントはよい環境だと思うでしょうし、全て自身の意思で決断するので、言い訳のできない環境に追い込まれているという意味では非常にハードではあります。私が事前に答えを持っているとか、そういうことはないです。
口を出さずに任せる
そのほうが勝てる確率は高い
――アドバイスを聞かれたら、するのでしょうか。先回りして言うようなことはしない印象があります。
藤田晋『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(文藝春秋、2025年11月19日刊行)
藤田 私が口を出すと、さきほど言ったように、「自分はこうしたかったけど、社長にこう言われたから」という言い訳になるんですよね。求められたらアドバイスしますけど、決めるのはあなたです、ということで決断は任せることが多い。
私はサッカーチームのFC町田ゼルビアの社長でもあり、個人的に馬主として馬を保有していますが、どちらにおいても現場に口を出しません。例えば、このレースに馬を出場させてくれとか、騎手はこの人にしてほしいと私が口を出して結果が出なかったときに、言い訳できてしまう。馬主に言われたとおりにしたら失敗した、と。
サッカーならば監督、馬に関しては調教師の先生の考えを尊重して任せる。つまりプロに任せることにしています。自由にやってもらう代わりに結果を出してほしいというスタイルです。その方が勝てる確率は高いからです。
◆◆◆
>>【第2回】「サイバー藤田晋会長が教える「部下を持たせてはいけない人」のあまりに明白な特徴」は12月19日(金)に配信予定です
>>【第3回】「「“課長止まりの人”と“役員にあがる人”の違いは?」→サイバー藤田晋会長の答えがド正論すぎて胸に刺さる」は12月20日(土)に配信予定です
>>【第4回】「会食で「好かれる人」「気を遣わせる人」の決定的な違いとは?サイバー藤田晋会長の答えが火の玉ストレートで何も言えない…」は12月21日(日)に配信予定です







