赤字路線への内部補助は
赤字額だけで判断すべきではない

 今後、内部補助をめぐり検討会の内外で展開されるJRと地方の対立が定期的に報じられるだろうが、内部補助を赤字の観点だけで語ると話がおかしくなることには注意が必要だ。

 JR東日本が10月27日に発表した「ご利用の少ない線区の経営情報(2024年度分)」によれば、災害などで長期運休した路線を除く輸送密度2000人/日未満の34路線63線区のうち、輸送密度が最小だったのは花輪線(荒屋新町~鹿角花輪間)の68人/日で、赤字額は約6.4億円だった。

 一方、赤字額が最大だったのは輸送密度1444人/日の羽越本線(村上~鶴岡間)で約55億円。続いて1261人/日の奥羽本線(東能代~大館間)の約34億円、1792人/日の常磐線(いわき~原ノ町間)の約33億円だった。

 これらは特急列車や貨物列車が走る重要線区だが、赤字額だけを問題視するのであれば、輸送規模が小さいため赤字額も少ない超閑散ローカル線より優先して廃止しなければならなくなる。これでは知事側の意見を引用するまでもなく、本末転倒である。

 また、輸送密度2000人/日以上の路線収支は公表されていないが、北関東や甲信越などの近郊ローカル線も多くが赤字だろう。これらの路線は、収支は赤字でもバスなど自動車交通では運びきれない輸送量があるため、鉄道として維持する必要がある。つまり赤字であるかどうかと、その額は、鉄道の存廃を決定する要素ではない。

 各地で法定または任意の協議会で、路線存廃の前提を置かない議論が始まっているが、JR側は共通して「赤字だから廃止しようというのではなく、鉄道としての特性を発揮できなくなっているから見直しが必要」であると強調している。

 これが建前を多分に含む主張であることは否定しないが、同時に本音であるのも事実だ。鉄道とは大量・高速交通機関であり、そのために重厚長大な設備を有している。半面、コストが高く、ルート設定の自由度が低いため、特定区間のまとまった輸送量がなければかえって非効率な輸送機関である。

 JR東日本はヒアリングにて「鉄道が役割を発揮できる地域においては、まちづくりとの相乗効果による地域活性化の可能性が大きい」が、「鉄道以外のモビリティと地域活性化施策の組み合わせにより、効果があげられる地域もあるのではないか」として、鉄道の役割を発揮できるか否かが重要な論点になると表明している。