
上野~札幌間の寝台特急「カシオペア」に用いられたJR東日本の「E26系」客車が6月30日に引退した。同車はカシオペア用に1編成(12両)のみ製造され、1999年7月16日にデビュー。きっぷが取れない人気列車として名をはせた。しかし、北海道新幹線新青森~新函館北斗間が開業し、在来線旅客列車が青函トンネルから撤退することになり、2016年3月にカシオペアとしての運行を終了した。以降は団体専用列車「カシオペア紀行」としてJR東日本管内で運行されていたが、車両の老朽化により、くしくも車両形式と同じ「26」年で終焉を迎えた。カシオペアで振り返る、寝台車の華と衰退の歴史とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
寝台特急列車の衰勢と前後して
登場したクルーズトレイン
寝台特急の時代はカシオペアとともに事実上の終わりを告げた。2015年3月に大阪~札幌間を結んだJR西日本の寝台特急「トワイライトエクスプレス」、同年8月に寝台特急「北斗星」が先駆けて引退しており、今も残る寝台特急は1998年7月にデビューした東京~高松・出雲市間の「サンライズ瀬戸・出雲」のみ。十年一昔である。
従来の寝台特急列車の衰勢と前後して登場したのがクルーズトレインだ。2013年にJR九州が「ななつ星in九州」、2017年にJR東日本が「TRAIN SUITE 四季島」、JR西日本が「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の運行を開始したが、旅行商品は軒並み100万円超えで庶民には手の届かない存在だ。
近年になってようやく、夜行列車の楽しみを気軽に味わえる列車が登場し始めた。JR西日本は1979年デビューの古参車両「117系」を改造した「WEST EXPRESS 銀河」を2020年5月に投入し、山陽、山陰、四国などを目的地とする臨時列車として運行している。
これに触発されたのか、JR東日本は今年6月10日、常磐線の特急型車両「E657系」を改造し、2027年春から首都圏と北東北を結ぶ夜行特急列車を運行すると発表した。117系は座席(普通車、グリーン車)と個室の組み合わせ、E657系は個室のみの構成で、いずれも個室はフルフラットになる。