この判決における「多額の利益」とは、動画収入が1億円を超え、「切り抜き動画」の収入も数千万円に上っていたことを指している(注2)。

 事件の性質上、脅迫や暴露内容の真偽ばかりが焦点になりやすく、暴露系YouTuberの末路といった視点で論評されることが多かったが、実のところガーシーの栄光と失墜は、わたしたちが否応なく巻き込まれつつある新しい階級社会における落とし子といえるものなのである。

海外を拠点にしている
ガーシー的な人々

 そもそも日本人でありながら日本社会から離れて自由に発言して人気を得るという「ガーシー的なもの」の萌芽は、すでに実業家のひろゆき(西村博之)や、YouTube大学でお馴染みの中田敦彦のような、海外に拠点を構える人気YouTuberに見られるものだ。

 これは、テレビやラジオなどの既得権益の強いローカルなプラットフォームに依存しない収益化による産物である。つまり、社会と経済の分離が加速したことによって、国や地域という地理的な制約を受けず、自らの能力を駆使して耳目を集め、効率良く金銭に換えることができるインフラが整ったのである。

 土地のしがらみにわずらわされないという意味において、彼らは身近な存在でありながら超脱的なオーラをまとい、それがまた視聴者を魅了する要素の1つにもなっている。究極的には、あらゆる動画配信者は、場所に関係なく、コンテンツを制作し、収益を得ることができるのだ。

 このような時代の到来を予見していたのは、経済学者のジャック・アタリである。

(注2)捜査関係者からの情報として、「東谷容疑者側に支払われた広告収入は昨年四~八月だけで計一億数千万円に上った」と報道されている。“ガーシー容疑者、動画広告収入は少なくとも1億数千万円…過激発言で再生回数稼ぎか”読売新聞オンライン(2023年6月6日)https://www.yomiuri.co.jp/national/20230605-OYT1T50239/