中間層の人類が浸る
ヴァーチャルな世界
アタリは、人類は1万年ほど前にメソポタミアの地で定住民となったものの、21世紀に再びノマド(遊牧民)となる者が増えるだろうと述べ、「超ノマド」(hyper nomade)、「下層ノマド」(infla nomade)、「ヴァーチャルノマド」(nomade virtuel)の3種類に大別されるようになると主張した(『21世紀の歴史――未来の人類から見た世界』林昌宏訳、作品社)。
エリートビジネスマン・学者・芸術家・芸能人・スポーツマンなどの〈超ノマド〉、生き延びるための移動を強いられる〈下層ノマド〉、定住民でありながら超ノマドに憧れ、下層ノマドになることを恐れて、ヴァーチャルな世界に浸る〈ヴァーチャルノマド〉である。(同前)
超ノマドであるエリートやセレブたちは、高度なスキルとボーダーレスなネットワークにより、地理的に拘束されない複数の収入源を持っている。ここには当然ながら海外に拠点を構え、複数の事業を手掛ける人気YouTuberも含まれている。グローバル企業の個人商店版といえるだろう。
片や、下層ノマドは、職を求めて場所を転々と移動する出稼ぎ労働者や季節労働者のようなワークスタイルで生きることを余儀なくされた低収入の人々である。そして、最後のヴァーチャルノマドは、最もヴォリュームの多い中間層に相当する。彼らは、アタリが上手く表現したように、定住民ではあるけれども、超ノマドのようなライフスタイルに憧れを抱く一方で、下層ノマドに転落することにおびえている。
なぜなら、経済状況の変化や技術革新の影響によってスキルが陳腐化したり、仕事が失われたりする可能性に常にさらされているからである。
そのため、「ヴァーチャルな世界に浸る」ことで不安と緊張から解き放たれようと欲するのだ。
ヴァーチャルな世界とは、デジタル通信技術によって提供される娯楽全般のことであり、XやInstagramなどのSNS、ソーシャルゲーム、Netflixといった動画配信サービスから、有名人などのスキャンダルやスポーツ観戦までを含む映像コンテンツ、AIパートナーなどのチャットボットやペット型ロボット等々である。







