「活動は忙しいんですか?」

――甚野さんは何歳だったんですか。

甚野:僕はその時40歳前後で、参加者の中だと平均ぐらいですかね。大阪の一流ホテルで開催されていました。プロフィールカードを全員持っていて、名前、年齢、職業、あとは自己PRみたいな。司会者がチーンとベルを鳴らすと男性側が移動する形式でした。

横田:信者歴とかは。

甚野:信者歴はなかったですね。ただ、女性に「活動は忙しいんですか?」って必ず聞かれるんです。おそらく信者としての活動のことなんですけど、こちらはあえて違うように捉えて「本当に活動が忙しくて……」って返していました。相手は信者としての活動だと思っているのですが、僕は違う活動を……。

横田:取材活動(笑)。

甚野しかも大阪で開催されているので、みんな関西弁なのに僕だけ関西弁じゃない。それも必ず聞かれるんですよ。

横田:地元の人じゃないからね。

甚野:それで、「いや、出張でよく大阪に来ていて」って言って。色んな取材でしょっちゅう大阪に来ていたので、それも事実です。「だから、ついでに面白そうなパーティーがあって、今日来てみたんです」っていうふうに、やっぱり嘘をつかないように話すんです。

横田:嘘をつくと後々面倒くさいしね。

「仕事は何をされてるんですか?」
への返し方

甚野:結婚を視野にいれてる人もいるんで、「仕事は何をされてるんですか?」って必ず聞かれるのが一番困りました。

 そういう時は、「本の関係の……」って言っていました。特に書店員とも言っていないのですが、書店関係の人だと勝手に思い込まれて乗り切りました。

 でも、海外だと潜入取材って一般的ですよね。

横田:たとえばイギリスは本当に潜入取材大国なんです。『デイリー・ミラー』の記者はバッキンガム宮殿にも潜入していました。しかも、自分たちが潜入しておきながら「簡単に潜入できるのは国防上よくない!」みたいな感じで(笑)。日本ではちょっと考えられないですよね。宮内庁はもっと厳しいだろうし。

 BBCもAmazonに潜入しています。でも、そこでも嘘をついて潜入するってないですね。だからよく、嘘の経歴でいろんな場所に潜り込んでたという話を聞くと、大丈夫かなって思いますよね。裁判になったりしたら嘘の履歴書や経歴がどう絡んでくるか分からない。何が飛んでくるか分からないですよ。

甚野博則(じんの・ひろのり)
1973年生まれ。大学卒業後、大手電機メーカーや出版社などを経て2006年から『週刊文春』記者に。2017年の「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌などで社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆。近著に『実録ルポ 介護の裏』(文藝春秋)、『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)、『衝撃ルポ 介護大崩壊』(宝島社)がある。
横田増生(よこた・ますお)
1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。93年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。99年よりフリーランスとして活躍。主な著書に、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』、『評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」』、『仁義なき宅配 ヤマトvs佐川vs日本郵政vsアマゾン』、『ユニクロ潜入一年』『潜入取材、全手法』など。『潜入ルポamazon帝国』(小学館)では、新潮ドキュメント賞、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞の作品賞を受賞。最新刊『「トランプ信者」潜入一年』(小学館)では、「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」を受賞。